Blog on Duty of Care 海外における企業の安全配慮義務

【第8回勉強会】本当にその病院で良いですか? 〜渡航先での安全・適切な受診と健康支援〜

 COVID-19の感染拡大により未曽有の事態の幕開けとなった2020年をきっかけに、弊社では会員企業様同士のコミュニケーションを目的として、定期的に勉強会を開催しております。今回の勉強会(第8回6月24日開催)は、「本当にその病院で良いですか? 〜渡航先での安全・適切な受診と健康支援〜」と題し、弊社グローバル・アシスタンス・ネットワーク専任マネジャーよりお話しさせていただきます。


 皆様は、日本で病院評価が行われていることをご存知でしょうか?


 公益財団法人日本医療機能評価機構(JCQHC)が第3者評価機関として、独自に評価項目を定め、 「患者中心の医療の推進」「良質な医療の実践1」「良質な医療の実践2」「理念達成に向けた組織運営」などの4つの領域で、訪問審査を担当する調査者(サーベイヤー)が評価し、認定する仕組みがあります。
 JCQHCの認定制度は「医療の質」が一定水準の品質を保っているかを評価し認定するものですが、民間企業のオリコン株式会社などは「50万人が選んだ、お薦めの病院ランキング!」と患者視点での評価を発表しています。またグローバルでは、NPOなどの非営利団体により病院評価やランキングが行われ、医療機関は評価される対象となっています。


 インターナショナルSOSでは、会員企業にグローバルで質の高い医療を提供するため、紹介する医療機関はすべて自社で品質評価を行ってから紹介する、という大前提でビジネスを行っています。そのため、前述のJCQHCのような第3者評価機関のように、グローバルで、刻々と変化する医療機関の状況を的確に調査し把握するグローバル・アシスタンス・ネットワーク(GAN)が社内組織として存在します。今回の勉強会は、病院の品質評価などをどのように行うのか、評価基準はどうなっているのかなど、極めて重要な「医療の質」についての話題を選びました。


● GAN(グローバル・アシスタンス・ネットワーク)のミッションと単なる病院紹介との違い


 通称GAN(ギャン)では、以下をミッションとしています。
 ⇒ぜひ、これからGAN(ギャン)と呼んでください。


 ・全世界で約91,800提携先ネットワークとWin/Winの関係構築(別に米国内約1,561,000の提携先)
 ・インターナショナルSOSの品質基準によるプロバイダネットワークの管理
 ・顧客にニーズに対応するサービスを提携ネットワークから支える
 ・提携サービスプロバイダ情報や地域事情など情報を独自のシステムで管理


 世界全域にわたる病院を中心としたサービスプロバイダネットワークの開拓・管理を、GAN本部(パリ)のもと世界26アシスタンスセンター専任GANチームの約100名が行っています。各GANの担当者は、所属するそれぞれのアシスタンスセンターの手配地域と同一地域内を担当し、インターナショナルSOSの世界同一のプロセス、スタンダードによるネットワーク作りとメンテナンスに責任を持っています。
 さらに提携ネットワーク構築では、他社の提携ネットワークを利用することなく、全てインターナショナルSOSの直接提携・管理を行い、それらを通じ、同時に各地の地域的専門性(インフラやロジスティクスの情報、関係法令など)などから、アシスタンスセンターでの活用情報や会員専用Webサイトで提供される情報などのベース(Information Source)を作り出しています。


 ここで注目すべきは、「他社の提携ネットワークを利用することなく」という点です。
 単なる病院紹介であれば、地域でそれを受け入れてくれる病院を検索し、紹介先の提携病院とすれば体裁は整います。また、カード会社や保険会社の病院一覧に片っ端から声を掛け提携病院とすればすぐに提携病院ネットワークは取り繕うことができます。しかし、インターナショナルSOSはそれを行わず、「全て直接提携・管理」を行います(なぜなのかは後述します)。



● GAN(ギャン)の担当するサービスプロバイダの種類


 グローバルで約100名のGANが担当するサービスプロバイダーとは病院だけでなく、以下を指します。


 【Medical providers】病院、外来診療所、歯科、調剤薬局、各分野専門医、臨床心理士、フィジオセラピー、検査会社、血液製剤供給機関、カイロプラクタ、鍼灸、民間救急車、医療器具会社など
 【Technical providers】通訳・翻訳、旅行会社、弁護士など
 【Aviation providers】医療専用機、チャーター会社、定期航空会社
 【Logistics providers】タクシー/リムジン、空港グラウンドハンドラー空港、船舶代理店、空港、港湾、海運/フェリー会社、葬儀社・遺体搬送業者、ホテル、ミーティングサービスなど
 【Security providers】セキュリティ/警備会社、セキュリティ情報会社など



● 海外の医療機関に受診する際に見られる例


 海外の医療機関は日本と違い別の常識が存在するかのように、信じられない情景があります。

図1.png
図1 東南アジアI国 
手術手袋が干してある(医療道具の使いまわし)


 【Medical providers】の1例ですが、図1にあるように手術用ゴム手袋が使い捨てではなく、洗濯し干してあります。これは清潔で感染症が防げるとは思いにくいですね。

図2.png
図2 南アジアN国 
救命救急の機器などが搭載されていない救急車


 また、図2は救急モニタ、AEDなどの医療器具がまったくない民間救急車ですが、これで患者が運ばれたとしたら緊急の事態に備えることはできません。


 このような、海外の医療機関に受診する際に見られる問題を【途上国・遠隔地】【先進国】に分けて整理すると以下になります。


 【途上国・遠隔地】


 ・医療者の教育研修・知識・技術・常識
 ・検査・治療機器の保有・機種・メンテナンス・読影能力
 ・院内衛生管理
 ・輸血の安全性
 ・薬剤の信頼性・安全性
 ・院内の安全・品質保証について
 ・院内ガバナンスなど  
 ・合法性
 ・言語
 ・医療費
 ・精算、支払保証
 ・医療情報提供への協力・事務的能力
 ・コンプライアンス


 【先進国】


 ・受診システム・保険システムの違い
 ・言語
 ・検査・治療方法の違い。健診
 ・医療費
 ・精算、支払保証、医療情報提供への協力・事務的能力、コンプライアンス


 その他、このような海外の医療機関受診で見られる問題はDownload可能なプレゼン資料にたくさんの例が写真で掲載されていますからご確認いただきたいのですが、やはり重要なことは、これらに直接訪問し自分の目で確認する「三現主義」(現場、現物、現実)です。約100名のGANが各地域毎に配属されている理由は、グローバルなサービスプロバイダーの品質・信頼性確認と保証を「三現主義」で行うためなのです。


※「三現主義」:机上ではなく、実際に「現場」で「現物」を観察して、「現実」を認識した上で、問題の解決を図らなければならないという考え方のこと。


 実際に訪問し、施設とサービスについてハードからソフトにわたりチェック(全世界で社内共通の電子評価シートで必要な確認項目やポイントをチェック)合法性・信頼性確認(許認可証、医師免許証、医療過誤保険、国際認証)などインターナショナルSOS独自の評価基準により、プロバイダの個々の項目の評価と総合評価、ランク付けを行う。また、各アシスタンスセンターのメディカルチームによる施設チェックの同行や評価・ランク付けなど、医師の介在と承認を得ることで医学的な観点からも品質を担保しています。


 さらに、それらの詳細情報はすべて「SPIN」と呼ばれる独自のデータベースに格納(許認可証の写しなども含め)されることで、アシスタンスセンター業務でスピーディーに活用することができます。当然それらの詳細情報は、GANによって定期的に「三現主義」で訪問確認され、継続的に情報の鮮度が保たれます。



● サービスプロバイダーに対する主なチェックポイント


 各サービスプロバイダーに対するチェックポイントは、主に以下になります。


 【病院の例】


 ・施設の全体的状況・印象
 ・院内衛生管理
 ・医師・専門医
 ・看護スタッフ
 ・検査・診断能力
 ・集中治療対応能力
 ・救急対応能力
 ・診療科・診療領域・設備
 ・病室・看護体制
 ・院内の管理システム
 ・医療スタッフの採用基準
 ・24時間連絡先など事務面での詳細事項
 ・医療費の妥当性
 ・立地とアクセス
 ・外国人患者診療の経験
 ・外国語対応能力
 ・海外での研修・研究プログラム
 ・地域内での評判
 ・利用時間、混雑や予約状況、受診しやすさ


 【医療機関以外の例】


 実施でチェックするだけでなく、許認可確認なども行います。

図3.png
図3 実地でチェック

 ・機内配置、設備、
 ・ストレッチャー搬入
 ・医療機器対応・固縛
 ・電磁干渉試験
 ・民間救急の車両、機器・設備
 ・空港作業経験など
 ・運航事業者・機体の登録
 ・航空保険
 ・民間救急の事業者登録・認定
 ・乗務員の消防研修
 ・社内マニュアルなど


 これらを前述の約91,800提携先ネットワーク(別に米国内約1,561,000の提携先)に対して「三現主義」で行う訳ですから、非常にタフな仕事になりますが、アシスタンスセンターを支える基盤(土台)としての役割は大きく、グローバルなGANの存在こそが、インターナショナルSOSのストックされた情報コアコンピタンス(無形資産)だと言っても過言ではありません。普段営業が「世界中の病院が紹介できます」と簡単にお伝えしている「ひと言」には、これだけの「三現主義」による情報蓄積があることをご理解いただければ幸いです。


 さらに、各地域で異なる医療費のベンチマークを行ったり、減額交渉を行ったり、各プロバイダーとのWin/Winの良好な関係を築き上げることは、海外赴任者や海外出張者の万が一に備えたスムースな医療情報取得や治療(KPI 13:適切な医療機関等との連携)にもつながる縁の下の力持ち、それがGAN(ギャン)なのです。



【参考】安全配慮義務(Duty of Care)を果たすとは何か

    ① 物的、人的環境の整備
    KPI 1:事業所・居住場所等の選定、セキュリティ体制の確認
    KPI 2:社用車の要否及び選定
    KPI 3:警備員、運転手の配置
    KPI 4:予防接種その他の医療のサポートの提供
    KPI 5:法律、コンプライアンス等のサポートの提供

    ② 安全教育の徹底(赴任前トレーニング等)
    KPI 6:政情不安等の問題
    KPI 7:治安・安全情報
    KPI 8:医療・衛生環境についての情報
    KPI 9:ビジネス環境、法的リスク等に関する情報
    KPI 10:危機状況の対応方法

    ③ 問題が生じた場合の対応体制の整備
    KPI 11:本社等への連絡、相談体制
    KPI 12:家族への連絡
    KPI 13:適切な医療機関等との連携
    KPI 14:警察その他の関係当局、大使館等との連携
    KPI 15:航空機を含む交通手段の手配、現地からの緊急出国、帰国等の手配
    KPI 16:外部専門家等との連携


※勉強会で共有された資料「本当にその病院で良いですか? 〜渡航先での安全・適切な受診と健康支援〜」(PDF)をご希望のお客様は、お手数をお掛けしますが、下記リンクよりリクエストフォームにご記入下さい。後日弊社営業担当より資料を送付させていただきます。
https://my.internationalsos.com/LP=7620



「グローバル人材を守る健康と安全の提言書」
(ベーカー&マッケンジー法律事務所とInternational SOS Foundation共著 2015年11月作成)
Employer's Duty of Care in Japan Positioning Paper
(English) Published by the Baker McKenzie and the International SOS Foundation. Outlines the Duty of Care for businesses operating in Japan.
https://www.internationalsosfoundation.org/apac

インターナショナルSOSは、海外で活躍される企業や
その社員の方々に医療とセキュリティのアシスタンスサービスを
提供しています。詳細は下記webサイトをご覧ください。
http://www.internationalsos.co.jp/

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