7月初旬よりCOVID-19の感染が急拡大しているインドネシアでは、医療状況が非常に逼迫しており、また多数のインドネシア在留邦人の方がCOVID-19に感染しています。
インターナショナルSOSの24時間365日稼働している東京アシスタンスセンターへも、特に6月後半より会員の皆様よりインドネシアの医療面やセキュリティ面についてお問合せを多数いただいております。
このような状況を受け、インドネシアにおける医療面とセキュリティ面について、どのような点に留意し、対応したらよいのかをアドバイスするウェビナーを、弊社会員限定公開で2021年7月15日に開催しました。
弊社の東京アシスタンスセンターで日々会員の皆様からのお問合せにアドバイスおよびサポートさせていただいているメディカル・ディレクター葵医師とセキュリティ・マネージャー山本より以下のトピックについてお話しさせていただきました。
・インドネシアでのCOVID-19状況(医療面)
・逼迫状況下における自己モニタリングの仕方(医療面)
・インドネシアからの医療搬送の方法と実績(医療面)
・医療面におけるボトルネックとなりうるもの(医療面)
・渡航規制(セキュリティ面)
・東南アジア地域での感染状況(医療面)
まず葵医師から、特に本社の人事部門の方々に、東南アジアにおいて、COVID-19感染状況と去年と比較し何が大きく違うのか、何に注意したらよいのかを理解していただく必要があると注意喚起がありました。
去年と何が違うのか?
・感染者数が爆発的に増えていて、若年層や40代、50代の方への感染も広がっている
・40代、50代の方でも中等症、重症のケースがみられる
・既往のある方、特に肥満の方が重症化する傾向になりそうである
・1週間から10日間経過後に、症状が悪化するケースも散見され、要注意
また、欧米諸国と比べて、東南アジア各国についてはワクチン接種率が低く推移していて集団免疫に至っていないため、一度感染拡大が始まると、あっという間に拡大していく傾向があるため注意が必要です。インドネシアの感染状況と医療逼迫状況は以下のとおりです。
感染拡大状況:8月第2週くらいまでは、状況は落ち着かないと推測
医療逼迫状況:
・公立病院、私立病院問わず一般病棟・ICUともに:満床に近い状況(ジャカルタ、スラバヤなどの都市部)
・酸素・治療薬:不足
・COVID-19陽性者の方向けの入院手配に数日ほど、時間を要する状況が続いている(弊社からの手配においても)
(図:インドネシアの医療逼迫の程度)
このように非常に逼迫した状況において、メディカルチームでは、医療モニタリングを実施し、迅速な患者の状況の把握に努めていますが、あまりに陽性者が多いため、医療モニタリングのトリアージの必要性も出てきているのが現状です。
インターナショナルSOSでは感染が逼迫するインドネシアでもCOVID-19陽性患者を搬送する際に必ず使用するポータブル隔離ユニットなどを活用し、数多くのCOVID-19陽性患者の医療搬送を実現しています。
ただし、隔離ユニットのサイズに体格の大きな患者が入るのか、ということが大きな問題になることがあります。隔離ユニットに物理的に入れる陽性患者はサイズの制約がありますので、いざというときに困らないよう、ぜひご確認ください。
また、海外からの医療搬送には、受け入れ側である日本の医療状況も非常に重要なファクターになります。その理由としては、日本側の受け入れ病院の確保がないと医療搬送のアレンジを開始することができない、また第5波の影響により、国内のCOVID-19病床事情が日に日に厳しくなってきており、海外からの患者の受け入れに渋ってきている傾向もあるためです。
懸念点:
・オリンピックの影響によるチャーター機の発着、駐機枠、検疫業務の増加
・陽性軽症者の帰国の扱い(検疫)
・日本の医療機関の逼迫により帰国者の受け入れの制限
・専用機適用症例のトリアージ
上記の懸念点にあるように、受け入れ側のオリンピック、さらに医療専用機そのものが取り合いの状態になっていることも相まって、医療搬送は通常時よりさらに難しくなっています。
また、日本側の受け入れにも以下のポイントがありますので、ぜひ念頭に入れておいてください。
重要なポイント:
・入国制限の例外措置をとれる妥当な医学的理由はあるのか?
・病院の指定:不可
・入院受入時間の指定:不可(特に週末と夜間)
・入院前のホテルや隔離施設の待機:不可
・14日の入院を約束するものではありません
・退院後は、主治医と検疫から隔離の指示を受けてください
引き続きワクチン接種がどの程度各国で広がっていくのか、感染拡大抑止の状況を見定めていく必要があります。ワクチンが国民に普及するまでは、集団免疫が出来てこないことから、今落ち着いている国でも大なり小なりの波を今後も繰り返すと思われます。医療インフラが元々脆弱である国ほどCOVID-19の流行によりあっという間に医療が逼迫を起こすので注意が必要です。
今回のウェビナーは主に本社人事部門の方を中心にご参加いただきましたが、インドネシアの現地赴任者の方も多くご参加いただきました。
「インドネシアの現地の状況が正確に本社に伝わってありがたかった!」
参加者からはこのようなお言葉もあり、遠くの日本にいると、現地の状況や緊張感はなかなか伝わらないこともあると思いますが、このような機会が、そのギャップを埋め、組織のDuty of Careにつながっていくことを、弊社の重要な任務として努めてまいります。
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後半は、セキュリティ・マネージャーの山本から、インドネシアの出入国規制、検疫措置について詳しくご説明しました。現時点では、弊社のアラートメールからも連絡していますように、インドネシアへの渡航は延期を推奨しています。(2021年7月15日時点)
Q&Aセッションでは以下の質問に対し回答しました。
質問1. 1歳過ぎた子供がおりますが、家族を呼び寄せる事についてはいかがでしょうか。
回答1. 1歳児に限らず、渡航は止めた方が良いでしょう。現地では、急ぎでない受診はおろか、緊急受診に関しても受診が難しい状況にあるからです。
質問2. 海外旅行傷害保険の適用が可能になることを前提に、日本への緊急搬送の判断基準をご教示ください。
回答2. COVID-19下での医療搬送において海外旅行保険については、考えないほうがよいでしょう。保険会社が医療的なニーズを判断してからOKを出すためです。軽症・中等症であっても医療逼迫状況によってはハードルを下げて帰国させる場合があるので、その場合、海外旅行保険の中でどこまで扱われるかという点について約款をよく確認する必要があります。
ウェビナーの最後には、インドネシア以外の東南アジア地域においてもCOVID-19感染拡大していることから、葵医師より感染状況のシェアをさせていただきました。
会員の皆様からは、タイムリーにインドネシアの医療状況の情報や他では得ることができない専門的な情報を得ることができた、医療搬送の判断や利用の可能性について理解できた等、多数コメントをいただきました。以下は、各組織において、従業員の方の健康および安全対策について現時点で最も優先しているトップ3の項目です。(弊社ウェビナーアンケート結果より)
・医療搬送および緊急退避
・最新の医療とセキュリティ情報の取得とコミュニケーション方法
・感染症対策
その他、渡航再開サポートや従業員への健康と安全に関する教育の項目を優先対応されている方も多数おられました。
私たち、インターナショナルSOSは、いつでもどこでも会員組織の従業員の皆様の健康と安全を守るために、日々サポートさせていただいております。現在、東京アシスタンスセンターでは、インドネシアのインターナショナルSOS専属医師や医療専門家、セキュリティ専門家、ロジスティック専門家、プロバイダーと連携をして、インドネシアに赴任されている方、出張されている方を全力でサポートしています。ご相談やご不安な点がございましたら、お気軽に東京アシスタンスセンターまでご連絡ください。東京アシスタンスセンター(24/7):+81-3-3560-7170
また、インドネシアへ事業を展開されている組織の経営者の方、人事およびリスクマネジメントご担当者の方におかれましても、このような状況下の中で、どのように貴組織の従業員の皆様の健康と安全を守りながら、安全に事業を継続すればよいのかのアドバイスやリスクマネジメントへの体制づくりをお手伝いいたしますので、ぜひ弊社までお問合せ下さい。
インドネシアにおける健康面と安全面のリスク対策について詳しい説明をご希望のお客様は、下記よりお問合せ下さい。
https://my.internationalsos.com/LP=7688
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当日は、急なウェビナー開催にも関わらず、約350名の会員の皆様にご参加いただきました。
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