Blog on Duty of Care 海外における企業の安全配慮義務

【第9回勉強会】各国のCOVID-19関連情報リサーチ方法

 COVID-19の感染拡大により未曽有の事態の幕開けとなった2020年をきっかけに、インターナショナルSOSでは会員企業様同士のコミュニケーションを目的として、定期的に勉強会を開催しております。
今回の勉強会(7月29日開催)は、「各国のCOVID-19関連情報リサーチ方法」と題し、弊社メディカルデパートメントのコーディネーティングナースよりお話しさせていただきます。

 まず、最初に自らがCOVID-19情報を検索し、調査する意味について簡単にまとめてみたいと思います。ここでは、自ら必要な情報を調べることを「セルフリサーチ」と呼びます。

●セルフリサーチがある場合とない場合

 「~市の医療状況を教えてください」という質問に対するアシスタンスセンターの答えは以下のように一般的なものになってしまいます。なぜなら、質問の背景や何を求めているかが不明だからです。

 「『~市』においては、ご存知の通り、6月に入り徐々に新規感染者数・死者数ともに増加し、現在も増加傾向が継続している状況です。特に、『~市』において多くの感染者が報告されております。政府は適宜、COVID-19陽性者のためのベッド数の増床等対策を行っており、現時点において医療逼迫は報告されておりません。
一方で、現地の医療水準は平時においても国際水準を満たしておらず、特に公立の医療機関は衛生環境や看護レベル、医療設備も一般的に十分ではございません。
すべてのICUベッドに人工呼吸器等の高度な医療設備が完備されているのかは不明であり、重症化した場合に高度な治療は期待できません。」

 「~市の医療状況を教えてください」という質問をした目的が、「~市」の駐在員を引き上げるか、あるいは赴任させるかの判断をしたいのであるとしたら、その判断をインターナショナルSOSに求めているとも考えられます。
 「~市」のコロナ陽性者数、ワクチン接種数、増加傾向か、減少傾向か、などをエビデンスとして把握していないようなので、帰任や赴任の判断をしたいと考えているとは想定しにくい質問です。
 では、エビデンス情報を持ち合わせた上で、以下のように質問をしたとします。

 「~市において、今日現在のコロナ陽性者数は100名あたりXX人で、ワクチン接種数はYY人、そして急速に増加中ですが、~市は医療体制が脆弱なので、感染者の増加が一気に増して、医療崩壊に陥る可能性は高いのでしょうか?」

 とすれば、エビデンスとしての数字から、近い将来医療崩壊する可能性は極めて高いという答えになる可能性もあり、CIVID-19に感染し重篤化しやすい高齢者、肥満傾向、既往症のある赴任者は帰任した方が良い、あるいは、赴任を中止した方が良い、という経営判断につながります。それでも会社の方針として駐在を続ける、もしくは赴任させるということだとすると、重篤化したときのプロシージャを関係者で確立し、共有しておくなどのクライシスマネジメントが必要、ということになります。

 つまり、セルフリサーチをせず、エビデンスなく行われる曖昧な質問には、一般的な答えを返すしか方法がないのです。しかし、セルフリサーチを行った後のエビデンスからの質問になると、自らがセルフリサーチで考察した判断に加え、もし不明な点や質問があれば、より効果的かつピンポイントに、質問ができる事となります。結果、社内にも説明しやすく、帰任、駐在継続、あるいは赴任などの会社として判断がしやすくなるのです。また万が一(COVID-19陽性者の重篤化)のプロシージャなどの取り決めの策定(備えあれば憂いなし)にもつながりやすくなります。
 インターナショナルSOSのコンサルティングプログラムでは、帰任や新規、再赴任のアドバイスを行う事が出来ますが、最終的な判断Return to Operationは、それぞれの企業の経営判断が必要です。よって、判断基準になるエビデンスを得るためにセルフリサーチを行うことは、Duty of Care(KPI 8:医療・衛生環境についての情報)において極めて重要なことだと言えます。



●セルフリサーチで重要なこと

・その国の医療水準を把握する必要がある

 セルフリサーチで重要なことは、海外の国々は医療インフラや医療水準が日本と違うということです。例えば、インドやインドネシアなどの医療水準の低い国でCOVID-19の感染爆発が起きますと、酸素がない、薬がない、という基本的な治療手段すら不足してしまいます(医療崩壊リスクが高い)。感染者数やその増加率は、医療水準の違う国で、かなり相違があると考える必要があります。したがって、まずはその国の医療水準をセルフリサーチする必要があります。

・現地現場の情報を加味

 セルフリサーチされた情報だけでなく、現地現場の情報も非常に重要です。現地や現場の肌感覚はもちろんですが、セルフリサーチした情報だけでなく、例えば、インドであればインドの医師から得た情報、インドネシアであればインドネシアの医師から得た情報をエビデンスに加味した方が、判断が的確になります。(インターナショナルSOSは世界27カ所に医師が常駐)



●会員サイトでは、判断するための医療基本情報をまず把握(必要条件)

 前述したように、まずはその国の医療水準を把握することがセルフリサーチの必要条件になります。インターナショナルSOSでは、そのための手段を会員専用ポータルで提供しています。

・その国の医療水準を把握するための手段

 【手段1】カントリーガイド(会員専用)
 https://www.internationalsos.co.jp/ 

Image1_2Aug.png

 
 以上のように「医療リスクレーティング」「医療水準」をチェックすることで、セルフリサーチの必要条件として、その国の医療水準を把握することができます。
 さらに、「アラート」だけをチェックしていただくことで、その国の最新のCOVID-19の状況・見解と「アドバイス」を確認することができます。

 【手段2】パンデミックインフォメーション(会員専用)
 https://pandemic.internationalsos.com/2019-ncov

  パンデミックインフォメーションサイトはCOVID-19だけでなく、鳥インフルエンザなど、あらゆるパンデミック情報を国別にあらゆる角度から確認できるものになっています。

Image2_2Aug.PNG


 最近、COVID-19が感染爆発したインドやインドネシアの「インドの最新情報とよくある質問とその回答(FAQ)」「インドネシアの最新情報とFAQよくある質問とその回答」などのFAQも用意されています。
 さらに、COVID-19における「渡航制限、航空業務およびスクリーニング」の情報なども日々リアルタイムで更新されています。
 このサイトが閲覧できるだけでも、インターナショナルSOSの会員である価値がある、と評価していただくユーザーもいるぐらいです。

 【手段3】COVID-19ワクチンの最新情報(会員専用)
 https://pandemic.internationalsos.com/2019-ncov/covid-19-vaccine


 パンデミックインフォメーションサイトには、各国COVID-19ワクチンの最新情報を随時Updateしているサブサイトもあり、ワクチン情報をセルフリサーチできます。
 そこにはCOVID-19ワクチン専門のFAQも用意されており、以下のような質問もすぐにクリアになります。


  COVID-19ワクチンのよくある質問とその回答(FAQ)
  https://pandemic.internationalsos.com/2019-ncov/covid-19-vaccine-faqs


『1回目と2回目は違う製剤のワクチンでも良い?』
『1回目の接種後感染しました、2回目は接種しても大丈夫?』
『過去に感染したことがあるけどワクチンは打っても平気?』


セルフリサーチとして、【手段1】カントリーガイド、【手段2】パンデミックインフォメーション、【手段3】COVID-19ワクチンの最新情報をご紹介しましたが、いずれもインターナショナルSOSの会員しか活用できないもので、世界中の拠点で収集したインターナショナルSOSならではの情報がここに集約されています。



●パブリックサイトの欠点

 インターネットの世界では世界中に情報が分散されていますから、それらを活用し、セルフサーチを行うことも必要になります。しかし、パブリックサイトの情報が正しいものか、そうでないものかを見分けるのは難しいものです。
 例えば、日本語で病気の情報を調べるときに、病名だけで検索すると医者以外のいろいろな人の主観の入った情報がたくさん検索リストされてしまいます。これらの情報がすべて正しければ問題なのですが、往々にして医学的な観点からは疑わしいものもあります。
 そこで以下のように「病名」に「.ac」(ドットac)を付けて検索してみます。

「病名 .ac」で検索

 すると、大学などの教育機関のWebサイトには「.ac」が付いているため、医学部の専門情報だけを抽出検索できます。このような検索手段を活用すれば、玉石混合のインターネットの情報の海の中でも、信憑性が高い情報を得られる可能性が高まります。



●パブリックサイト検索のコツ

 病気の情報を調べるのに「.ac」を付けると信憑性の高い情報を得やすいのと同じように、世界中のCOVID-19の情報をセルフリサーチするためには「コツ」があります。
 今回の【第9回勉強会】各国のCOVID-19関連情報リサーチ方法では、その「コツ」を以下のようにまとめオープンにしました。

  ・外部サイトの探し方「6つのポイント」
  ・検索キーワード(英語)を使用して検索する「コツ」

  
 これらを駆使すると、「〇〇国の〇〇州(市)におけるベッド占有率や医療逼迫が知りたい。」という疑問も容易に解決することができます。つまり、検索キーワードをどのようにするかによって精度良い情報を検索できるかどうかが決定するのです。
(この検索方法を海外赴任者が知ることは、自らの地域の情報を的確に知るという意味でDuty of Careにつながる)

※勉強会で共有された資料「各国のCOVID-19関連情報リサーチ方法」(PDF)は、最下部にありますリクエストフォームよりご請求ください。


●セルフリサーチからの情報によるクライシスマネジメントがDuty of Careにつながる(十分条件)

 ここまで、セルフリサーチの方法についてリスクマネジメントの視点でまとめてきましたが、これはDuty of CareのKPIでは「KPI 8:医療・衛生環境についての情報把握」にあたります。そしてこれにより、赴任者を帰任させる、あるいは赴任させる、という判断が適切に行われたとします。

リスクマネジメントとして、十分な「KPI 8:医療・衛生環境についての情報把握」が行われ、適切な判断が行われたとしても、万が一赴任者がCOVID-19で陽性になってしまったとき、誰がどのようにどう対処するか、というプロシージャを決めておかないと、クライシスマネジメントになりません。したがって、これらのクライシスマネジメントを以下のKPI毎にプロシージャ化しておくことが、セルフリサーチの十分条件となります。

・KPI 11:本社等への連絡、相談体制
・KPI 12:家族への連絡
・KPI 13:適切な医療機関等との連携
・KPI 16:外部専門家等との連携

 これらのプロシージャを決めず(想定せず)、赴任者をCOVID-19で感染爆発している地域に留める、あるいは赴任させるのは非常にリスクが高く、COVID-19陽性者が重篤化した途端に、ドタバタ劇が避けられないことになってしまいます。

 海外赴任者のためにも、「セルフリサーチによるリスクマネジメント」、及び「COVID-19陽性者発症時のプロシージャを社内で決めておくこと(クライシスマネジメント)」、この2点をお願いして、第9回勉強会を終わりにしたいと思います。



【参考】おススメ外部サイト(勉強会で共有された内容より一部を以下に抜粋)

 平時の各国の医療事情を知るためのサイト(人口100人当たりの医師の数)
 https://data.oecd.org/healthres/doctors.htm

 各国の感染状況を把握
 https://www.worldometers.info/coronavirus/

 各国の感染状況を把握
 https://ourworldindata.org/

 ワクチン情報(ロイター通信)
 https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/vaccination-rollout-and-access/

 ワクチン情報(日本経済新聞)
 https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/#completedVaccinationPer100ByCountry

 WHOレポート(定期的に更新される、一例としてマレーシアは以下)
 マレーシア
 https://www.who.int/malaysia/emergencies/covid-19-in-malaysia/situation-reports



【参考】安全配慮義務(Duty of Care)を果たすとは何か

    ① 物的、人的環境の整備
    KPI 1:事業所・居住場所等の選定、セキュリティ体制の確認
    KPI 2:社用車の要否及び選定
    KPI 3:警備員、運転手の配置
    KPI 4:予防接種その他の医療のサポートの提供
    KPI 5:法律、コンプライアンス等のサポートの提供

    ② 安全教育の徹底(赴任前トレーニング等)
    KPI 6:政情不安等の問題
    KPI 7:治安・安全情報
    KPI 8:医療・衛生環境についての情報
    KPI 9:ビジネス環境、法的リスク等に関する情報
    KPI 10:危機状況の対応方法

    ③ 問題が生じた場合の対応体制の整備
    KPI 11:本社等への連絡、相談体制
    KPI 12:家族への連絡
    KPI 13:適切な医療機関等との連携
    KPI 14:警察その他の関係当局、大使館等との連携
    KPI 15:航空機を含む交通手段の手配、現地からの緊急出国、帰国等の手配
    KPI 16:外部専門家等との連携


※勉強会で共有された資料「各国のCOVID-19関連情報リサーチ方法」(PDF)をご希望のお客様は、お手数をお掛けしますが、下記リンクよりリクエストフォームにご記入下さい。後日弊社営業担当より資料を送付させていただきます。
https://my.internationalsos.com/LP=7746



「グローバル人材を守る健康と安全の提言書」
(ベーカー&マッケンジー法律事務所とInternational SOS Foundation共著 2015年11月作成)
Employer's Duty of Care in Japan Positioning Paper
(English) Published by the Baker McKenzie and the International SOS Foundation. Outlines the Duty of Care for businesses operating in Japan.
https://www.internationalsosfoundation.org/apac

インターナショナルSOSは、海外で活躍される企業や
その社員の方々に医療とセキュリティのアシスタンスサービスを
提供しています。詳細は下記webサイトをご覧ください。
http://www.internationalsos.co.jp/

Blog on Duty of Care ~ 海外における企業の安全配慮義務ブログ ~ Duty of Careとは? Blog on Duty of Care