Blog on Duty of Care 海外における企業の安全配慮義務

ウェビナーレポート(9/15(水)開催)

 世界各地でワクチン接種が進んでいる一方で、COVID-19の変異ウイルスであるデルタ株の感染は、世界中で急拡大しており、収束の見通しはいまだたっていない状況です。

 現在、東南アジア地域においてCOVID-19の感染が急拡大していることから、弊社へ医療搬送の依頼が急増しており、また危機対応計画見直しへのお問い合わせも受けております。

 このような状況を受け、急遽2021年9月15日にウェビナーを開催させていただきました。以下の内容にて弊社のメディカル・ディレクター 葵佳宏医師、セキュリティ・ディレクター 黒木康正よりお話させていただきました。

第1部
• The Business Continuity Institute(以下BCI)クライシスマネジメントレポー トからみるクライシスマネジメントのトレンド
• 東南アジア地域での医療アップデート
• 2021年前半に東京アシスタンスセンターで取り扱った医療搬送ケースの紹介
• 医療アシスタンス&医療搬送の常識の変化
• ワクチン接種

第2部(会員様限定公開)
• 従業員の健康と安全のリスクに対する留意点と対応策
(医療搬送、COVID-19陽性者患者への対応、危機対応計画)



>The Business Continuity Institute(以下BCI)クライシスマネジメントレポートからみるクライシスマネジメントのトレンド

 まず、黒木からは、BCIが作成したクライシスマネジメントレポートからみるクライシスマネジメントのトレンドと調査結果をご紹介しました。このレポートは、BCIが近年の危機管理に関するオペレーションや戦略上の変化を調査することを目的に作成されました。また2021年5月から6月にかけて、事業継続やリスク管理担当者、人事部長、最高経営責任者、取締役の方にアンケートを実施し、そのアンケート結果もレポート内に反映されています。

 アンケート概要
アンケート概要.png


 レポートから以下の3つの項目を取り上げ、どのような傾向があるのかをアンケート結果もふまえながらお伝えしました。

1)危機管理組織のあり方について
- 集権型の危機対応アプローチが主流化傾向にあり、その成功確度は高まる。

 以下危機管理体制についてのアンケート結果ですが、集権型およびハイブリッド体制で危機管理を行っている組織が多く、地域別・ビジネスユニット別にて危機管理を行っている組織は限定的でした。また、集権型・ハイブリッド型で危機管理体制を行うほうが効果的であるというということもアンケート結果から読み取れます。

Centralised vs Localised.png

2)COVID-19後の危機管理のアプローチとプライオリティについて
- COVID-19後でも危機対応において従業員の健康確保は必須不可欠であり、部門を越えたアプローチが主流となってくる。


 COVID-19後でも危機管理は、半数以上の方がより部門間を超えた協働的なアプローチをしていくようになると考えています。
 また、危機管理のプロセスにおいて、88%の方が、従業員の健康と幸福度が重要考慮事項であると回答しています。この項目は、パンデミック前では重要項目として上位にあがってきていませんでしたが、今回のパンデミックにより、従業員の健康と幸福度を重要視する傾向にあることがわかります。

Collaboration and Health of Staff.png

3)COVID-19に対応するための危機対応計画のあり方とは
-危機管理計画はより「素早く」、「状況対応」的なものになってきている。

 COVID-19影響下で、約30%の方が、既存の危機対応計画においてそれほど有効ではない、あるいはそのままでは使用できなかったと回答しています。
既存の危機対応計画がなかった場合には、約20%の組織が新しいプランを作成し、約60%の組織が、既存の危機対応計画をCOVID-19対応用に状況に合わせてアップデートしています。

Crisis Planning.png
 皆様の組織において、COVID-19影響下における既存の危機対応計画の有効性はいかがでしょうか。
いかなる状況においても、危機対応ができるよう、常に危機対応計画の見直しをしていく必要があります。


* * * * *

>東南アジア地域での医療アップデート

 葵医師からは、まず、東南アジア地域のCOVID-19新規感染状況、医療状況、ワクチン接種状況について説明しました。

 全体的な傾向として、COVID-19罹患者は、2020年と比較して桁違いに増えており、既往者や肥満、若年層でも重症化しやすく、治癒までの期間が約2週間ほど(以前は1週間程)となっています。
 一時感染が急拡大したインド、インドネシア、ミャンマーは収束に向かっています。
 ワクチン接種完了率は、東南アジア地域においては、いまだ低い状況です。

 ベトナム(要注意地域)
新規感染状況:約13,000人/日
医療状況:ICU、酸素が不足している。ホーチミン以外の感染が拡大している地域では、病床の増床があまりできないため、医療逼迫が進んでいる。
 

 フィリピン(要注意地域)
新規感染状況:約20,000人/日(デルタ株が優位、陽性率は上昇傾向)
医療状況:医療逼迫は持続し、一般COVID-19病床確保は難しい、ERでは約50~200人が待っている状態、スタッフや機材不足、一部ストライキ等でERや病床の閉鎖が起きている。

 モンゴル(要注意地域)
新規感染状況:約3,700人/日(増加傾向、先週より約13%増)
入院先:基本は公立病院

 タイ(ピークアウト地域)
新規感染状況:約14,000人/日(軽症と中等症は、自宅隔離)
医療状況:COVID-19 ICUはまだ逼迫が続いている。(私立病院:約90~100% 公立病院:約100%)
非COVID-19 ICU病床(私立病院:約80~90% 公立病院:約90~100%)酸素、薬剤逼迫の報告はない。

 マレーシア(ピークアウト地域)
新規感染状況:約17,000~20,000人/日(高水準での新規感染続く)
医療状況:クアラルンプールのICU逼迫状況:7割程度(ワクチン接種完了率が高くなってきているため、クアラルンプール周辺地域ではベッドが空き始めている)
ジョホールバル、ペナン、サバなどワクチン接種率が低い場所では、医療逼迫になっている。

 インドネシア(収束地域)
新規感染状況:約6,000人/日(先週から比べてさらに減少)
医療状況:正常化、酸素・薬剤不足も解消
医療インフラ:ジャカルタ以外は脆弱。ワクチン接種率が低いため、再サージではICUはすぐに埋まってしまうため要注意

>2021年前半に東京アシスタンスセンターで取り扱った医療搬送ケースの紹介 、 医療アシスタンス&医療搬送の常識の変化

 上記の東南アジア地域の状況を受け、現在、東京アシスタンスセンターには、東南アジア地域で勤務されている会員の方からのお問い合わせが多い状況です。万が一COVID-19に罹患した場合には、以下のようにインタナショナルSOSのメディカルチームが一丸となって、サポートをさせていただいております。
 そこで非常に重要なのは、患者からの詳しい情報を得ることです。その情報から、どれだけのリスクがあるかアセスメントを行うことで、より適切で迅速なサポートができるからです。
 

 >まずはお電話にてヒアリング:

現地の担当者、可能であれば患者から生の情報収集 (現病歴、発症日、現症、濃厚接触歴、医療機関名、担当医名、指示内容、処方薬、入院か外来か、リスク因子、年齢等)   

 • 外来の場合:

定期的な電話ヒアリングを行い、気になる兆候がないか弊社医師が確認 →受診が必要と思われれば、外来手配や、遠隔診療など

 • 入院の場合:

患者と同僚以外にも、主治医から医療情報の収集を試みる

 • 弊社の見解:

予想された経過かどうか、あるいは懸念点がある場合は何か、治療内容、今後の見込みについてへのコメント

 • 医療搬送:

医学的必要性の有無、適切なタイミングや方法、目的地についての提案 

 COVID-19によって、様々な点において大きな変化を余儀なくされていますが、医療搬送も大きく変化しました。現在、医療搬送を行う際には、以下の点において留意する必要があります。 


 

 • 今まで以上に搬送時間がかかる

 • 急性期では、より現地治療優先になる

 • 重症度に関係なく、特にCOVID-19陽性の場合には、最寄りの医療先進国へ搬送で 

     はなく、母国へ帰国させる

   • オペレーションを行う上で、政府とのより密接な連携が不可欠になる

   • リレー方式ミッションとなる(例:シンガポールチームが日本の空港まで搬送

     し、日本チームが空港で患者をピックアップし、入院先へ搬送)

   • 帰国後の入院先確保がより困難になる場合がある(日本の医療状況も確認する必

     要がある)

 

 これまで以上に、医療搬送を行う際には、「どのタイミングで」、「どのような搬送モード」、「搭乗クラス」、「どのような医療チームによって」、「どこに搬送するのが適切なのか」というインターナショナルSOSのメディカルチームによる見解が重要になります。

 COVID-19影響下においても、インターナショナルSOSは全世界に91,800社ある認定プロバイダーとの綿密な連携により医療搬送を実施しています。
 2021年1月から7月末時点で、全世界で約360件の医療搬送を実施しました。(2020年から約1.5倍増)
また、2020年12月~2021年9月14日時点で、東京アシスタンスセンターで取り扱った医療搬送は、25件です。COVID-19の影響下においては、通常母国へ帰国させるのですが、現在日本においても医療逼迫にあることから、第3国や首都へ移送するケースが急増しています。

 医療搬送のスペシャリストである葵医師からは、インドネシアから日本への医療搬送ケースについて詳しく説明させていただきました。

 医療搬送を対応したCOVID-19罹患者は、インドネシア僻地(サイト)在住の60代で既往歴(悪性腫瘍)があり、COVID-19ワクチンをまだ接種していませんでした。この方は、初電時は軽症でしたが、症状が急速に悪化したことから、葵医師の推奨のもと、医療搬送によって日本へ帰国されました。(初電日から11日後に帰国)
 今回は、会員企業や各当局との連携が非常にうまく機能したため、スムーズに医療搬送を行えたケースでした。もし連携がうまく機能しない場合には、このCOVID-19罹患者はインドネシア僻地にいたため、帰国までさらに時間がかかることが予想されます。

 なぜ、スムーズに医療搬送が行えたのでしょうか。
以下の点を理由として挙げさせていただきました。 

 

  • 発症から3日目での入電(患者の企業の人事より) 

  • 当初から患者の詳細、連絡先、既往歴を細かくいただけたこと 

  • 国内移動(危険因子のある患者だったため、まずは医療水準の低い僻地から、

    医療水準の高いジャカルタへ)の推奨に対し、すぐに承認がおりたこと 

  • 患者のかかりつけの病院が東京にあった(この点が大きな要因:日本では医療逼迫

    しており受入病院がなかなか見つからない状態のため) 

  • インターナショナルSOSのジャカルタチームと日本チームとのリレー方式による搬

    送(ジャカルタチームが日本の空港まで搬送し、日本チームが空港で患者をピック

    アップし、入院先へ搬送)  

 

 COVID-19影響下での医療搬送は、患者の詳しい情報をいち早く取得すると同時に、「どのタイミングで」、「どのような搬送モード」、「搭乗クラス」、「どのような医療チームによって」、「どこに搬送するのが適切なのか」というインターナショナルSOSのメディカルチームによる見解が非常に重要になります。この見解は、経験豊富な弊社のメディカルチームがサポートしますので、ぜひ安心してお任せください。

>ワクチンについて 


 葵医師からは、以下ワクチンの最新の知見と"いかに重症化しないことがとても大事だ"というメッセージがありました。 

  • デルタ株:より易感染症のためブレークスルー感染がおこっている。集団免疫がつ

   きにくい。

  • ワクチンはデルタ株においても有効だが、ワクチンだけでは限界なので、引き続き

    マスク着用、ソーシャルディスタンシングを続けることを推奨する

  • ワクチンは細胞性免疫、液性免疫両方に寄与する

  • 自然感染後もワクチンは打ったほうがより免疫応答が強くなる

  • 交差接種について:交差接種したほうがより免疫がつく

 

* * * * *

 以下の内容は会員様限定公開にて、より具体的に留意する点やアドバイスをさせていただきました。

>COVID-19罹患者の医療搬送のタイミングについて

 すでに、何回かご説明させていただいておりますが、やはり、以下の弊社メディカルチームからの見解がとても重要になります。

 「どのタイミングで」、「どのような搬送モード」、「搭乗クラス」、「どのような医療チームによって」、「どこに搬送するのが適切なのか」

 また、地域因子、ロジ因子、患者の年齢、既往歴、時期(急性期、亜急性期、慢性期)や経過によっても状況は刻々と変化していますので、その点も考慮し医療搬送の判断をします。

 実際にどのように医療搬送のタイミングを判断したのか、例として以下のケースを紹介しました。

 例:医療崩壊した高医療リスク国(アジア)

  • 医療状況:遠隔診療のみ、レントゲンや採血も対応不可、入院先および療養ホテル

    の確保が困難、薬剤や酸素不足

  • 弊社の見解:一切の客観的臨床経過の把握が不可能、酸素が必要になると選択肢が

    ないことを懸念

  • 弊社の推奨:軽症のうちの帰国

  • 結果:COVID-19罹患者は中等症で帰国

 

 最後に、葵医師からは、管理者として、医療搬送を要請する際に認識していただく点およびサポートしていただきたい点についてお話しました。
 特に、COVID-19罹患者と帰国意思の確認、患者の詳しい情報(出国時に必要になる書類、家族の連絡先、かかりつけ病院など)を、弊社に早いタイミングでご提供いただくことがとても重要になります。そうすることで、COVID-19罹患者をより安全に帰国していただくお手伝いが可能になります。

* * * * *

>COVID-19をふまえた危機管理のあり方について

 黒木からは、BCIのクライシスマネジメントレポートもふまえた上で、危機管理体制について、以下の3つのポイントで構築していく必要性があると説明しました。

 1)集権型と分散型アプローチのバランスをとる必要がある
危機管理体制は、中央集権モデルが主体となり、現地拠点の裁量を考慮しながら、対応していくモデルに進んでいく。

 2)従業員を重視した態勢の構築
従業員の健康と幸福度(Wellbeing)が危機管理の中でも重要な要因となっていき、特にCOVID-19影響下においては手厚いメンタルヘルスケアが重要となってくる。

 3)「オールハザード」アプローチの計画づくりへのシフト
シナリオベースの詳細な計画より、オールハザードアプローチ型の対応計画のほうが実践性が高く、現実的なものとなっていく。

* * * * *

 Q&Aセッションでは以下の質問に対し回答しました。

質問1:国際医療搬送でのECMO使用は可能でしょうか?
回答1:技術的には可能ですが、現時点ではとてもチャレンジングな状況です。
理由としては、どれくらいECMOを回している状態で、患者の状態が落ち着いてるかどうかで変わってくるためです。日本で受入れ可能な医療機関やECMO対応救急車の手配をする必要もあります。またECMOに慣れている医療チームでないと使用は難しいと考えます。

質問2:会社内でCOVID-19罹患者が出た場合、どのように対応したらよいでしょうか。
回答2:厚生省のガイドラインに沿って、COVID-19濃厚接触者の振り分けをし、COVID-19濃厚接触者は、在宅勤務をしていただくことを推奨します。

質問3:現状、マレーシアからシンガポールへ医療搬送は可能なのでしょうか。
回答3:COVID-19罹患者は不可です。非COVID-19罹患者は可能ですが、色々な制約があるため、ケースバイケースで対応するようになります。


 ご参加された皆様からは、以下のようなフィードバックをいただきました。

  • 医療搬送は、インターナショナルSOSに要請をすることが一番だと考えている。

  • 東南アジア地域の状況や医療搬送の実例や流れをよく把握できた。

  • 医療搬送の判断は、多くの因子を考慮すべきこと、早いタイミングで情報共有を開

    始すべきことを理解した。

  • 感染症を踏まえたリスクへの迅速な意思決定が重要であり、危機対応机上演習等を

   実施しながらリスク認識と対処を行っていきたい。 

 * * * * *

 私たち、インターナショナルSOSは、いつでもどこでも会員組織の従業員の皆様の健康と安全を守るために、日々サポートさせていただいております。現在、東京アシスタンスセンターでは、世界中のインターナショナルSOS専属医師や医療専門家、セキュリティ専門家、ロジスティック専門家、プロバイダーと連携をして、世界中の会員の皆様を全力でサポートしています。ご相談やご不安な点がございましたら、お気軽に東京アシスタンスセンターまでご連絡ください。
東京アシスタンスセンター(24/7):+81-3-3560-7170

 また、海外へ事業を展開されている組織の経営者の方、人事およびリスクマネジメントご担当者の方におかれましても、このような状況下の中で、どのように貴組織の従業員の皆様の健康と安全を守りながら、安全に事業を継続すればよいのかのアドバイスやリスクマネジメントへの体制づくりをお手伝いいたしますので、ぜひ弊社までお問合せ下さい。


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