Blog on Duty of Care 海外における企業の安全配慮義務

ウェビナーレポート(12/8(水)開催)

 世界各地でワクチン接種が進んでいる一方で、COVID-19の感染状況は常に変化しており、収束の見通しはいまだたっておりません。

 皆様におかれましては、各国の感染状況や入国規制に合わせて、海外渡航をすでに再開している、もしくは検討されていることとと存じます。

 COVID-19の感染状況は各国、各エリアで異なるため、引き続き感染対策を講じながら渡航再開を進めていく必要があります。従業員の方が安心、安全に渡航再開をするために、組織としてどのような点に留意し、対策を講じていく必要があるのか、2021年12月8日に開催したウェビナーにて、メディカル・ディレクター野村医師とセキュリティマネージャー山本よりお話させていただきました。
以下が、ウェビナーの内容です。

• 渡航再開アンケート調査結果のご紹介(弊社2021年11月実施)
• COVID-19、オミクロン株情報
• ワクチン最新情報とワクチン接種について
• メンタルヘルスへの影響、ケーススタディご紹介
• 渡航再開における留意点(医療・セキュリティ)

※以下トピックは、会員様限定公開
• メンタルヘルスにおけるアドバイス、対応策
• 渡航再開におけるアドバイス、対応策(医療・セキュリティ)

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 セキュリティマネージャーの山本からは、弊社が実施した渡航再開アンケート(2021年11月10日から11月22日)の調査結果をご紹介しました。このアンケートは、弊社会員の方を対象に、日本の組織が主に事業展開する30ヵ国に対する渡航再開状況についてご質問させていただいたものです。調査対象の約40%以上のご回答をいただきました。なおこの調査結果は、オミクロン株が発見される前に抽出したものです。

 調査結果から、以下4つのポイントを取り上げました。

  1. 調査対象国のうち、今年2月にクーデターが起きたミャンマーを除く全ての国で出張の再開が見受けられる。
  2. 特に中東、アフリカ、欧州などの地域では、2020年に比べて大幅に出張を再開している傾向が見受けられる。
  3. 地域別にみると、アジアでは過半数が出張を再開していない国が多いのに対し、その他の地域では過半数が出張を行っている国が多いことが見て取れる。
  4. 出張再開を決定する上で、ビジネス上渡航を延期できなくなったことや渡航先の国の出入国規制や隔離期間・要領が緩和されたことなどが引き続き重視されている。加えて、2020年末から各国でワクチン接種が開始されたことで、渡航先および渡航(予定)者のワクチン接種状況も出張再開を判断する上で重要な要因と考えられるようになったことが窺える。

渡航再開を決定する上で重視した要因は、以下5つが最も多い回答でした。

  1. ビジネス上、渡航を延期できなくなったため
  2. 渡航先の国の出入国規制、隔離期間・要領が緩和されたため(ワクチン接種証明書による各種簡略化を含む)
  3. 現地の医療体制についての不安を解消できたため
  4. 渡航先および渡航(予定)者のワクチン接種が進んだため
  5. 現地側の感染症対策が十分とれたため

また、30ヵ国の国ごとに、出張状況(出張を停止していない・再開した・再開していない)の結果も共有させていただきました。


 野村医師からは、オミクロン株を含むCOVID-19最新情報、ワクチン接種についてお話させていただきました。

COVID-19最新情報

デルタ株の潜伏期間:4日
無症状患者が多い傾向
軽症、中等症の場合の感染力:5日目までが最大、10日未満で低下
重症の場合の感染力:発症後1週間程度で肺炎症状が悪化するが、感染力は20日以内で下がる
後遺症:長引きやすく、12週間後も後遺症が継続し、場合によっては数か月間続くこともある(Long COVIDとも呼ばれる)
後遺症の症状:
 • 呼吸器症状(息切れなど)
 • 頭がすっきりしない、モヤモヤする(Brain fog)
 • 不眠
 • 脱毛
 • 味覚障害・嗅覚障害

オミクロン株はデルタ株とどう違うのか
(2021年12月8日時点の情報であり、今後2~3週間後により詳しい情報が公開されると考えられる)
 • オミクロン株の方が感染性が高い
 • 今までと異なる症状はない
 • 軽症
 • 無症状

ワクチンの追加接種、交互接種について
<追加接種>
第25回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料より(2021年10月28日)

 • 政府が定めたガイドラインに従う

 • 当面の間は、薬事承認されているファイザー社のワクチンを追加接種で使用する

 • 既存ワクチンのブースター接種に関する多くの研究から、感染率を下げる可能性が高い

 • ファイザーでは発症予防効果95.6%であった

<交互接種>
第24回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料より(2021年9月13日)
 • 接種ごとにウイルスベクターワクチンとmRNAワクチンに変えることは科学的に矛盾しない
 • 特別な事情の場合、日本でも交互接種を許可することになった
 • 頭痛、発熱、疲労感などの軽微な副作用が増える
 • 抗体産生が増える

<インフルエンザワクチンとの併用接種>
 野村医師は、併用接種は推奨するとコメントしました。

 COVID-19のパンデミック後、COVID-19感染症対策を講じ始めてから約2年が経ちました。新たな習慣や生活様式、COVID-19の感染の恐れ、不明瞭なソーシャルディスタンシングガイドライン、信頼性の低いメディアからの情報など、様々な要因が重なり、メンタルヘルスにも影響がでてきています。
 例えば、欲求不満、倦怠感、気分の落ち込み、うつ病発症の可能性、精神疾患の方の症状の重症化(他者とのコミュニケーションの低下、精神科への不要不急の受診が減少などが要因)などがあげられます。パンデミック中のメンタルヘルスに関する調査*では、以下のような調査結果が出ています。

  •  • 日本では当初自殺件数は減ったが、2020年後半は特に女性の自殺が目立った
  •  • 同スタディによると、40歳以下の女性のほうが同年代の男性よりも職場や環境が大きく変化した(25% vs 17%)
  •  • 医療従事者と一般人口を対象に行われたアンケートでは、医療従事者のほうが孤独感、絶望感、希望欠如などメンタルヘルスにおける問題点が多かった
  •  • 前期・後期高齢者を対象に行われてきたアンケートでは、普段は外出や運動をしていると思われる前期高齢者のほうがパンデミック後に意欲が減少しており、メンタルヘルスへの影響も懸念された



• Suicide and mental health during the COVID-19 pandemic in Japan | Journal of Public Health | Oxford Academic (oup.com)

• Mental health of medical workers in Japan during COVID-19: Relationships with loneliness, hope and self-compassion (nih.gov)

• Mental Health Status of the Older Adults in Japan During the COVID-19 Pandemic (nih.gov)



 インターナショナルSOSでは、メンタルヘルスサポートを提供させていただいております。2020年9月にサポートさせていただいた事例をご紹介しました。

 サポートさせていただいた方は、20歳代の男性で、パニック障害やうつ病の既往歴があり、英語があまり得意ではありませんでした。シンガポールへ1か月間出張へ行かれたのですが、当時シンガポールへの入国はとても厳しく、政府が指定したホテルに1週間滞在しなくてはいけませんでした。空港に到着してからすぐに行き先を伝えられずにバスでホテルに移動し、政府の監視下で部屋を一歩もでることなく1週間隔離されました。食事は一日3回ドアの前に置かれる状態だったそうです。
 英語が不得意だったこと、部屋から一歩も出ることができなかったこと、近隣の私立の日系クリニックでは初診は対面のみの受付であったことなど、様々な要因が重なり、不安な症状が再発してしまいました。そこで、東京のアシスタンスセンターの日本人医師が症状を伺ったうえで、日本人のカウンセラーにつなぎ、オンラインで計5回のセッションをうけていただきました(隔離期間中:3回 / 隔離後:2回)。さらに、弊社の日本人医師からは、この患者は睡眠導入剤を持参していましたが、症状に応じた服用方法をアドバイスしました。その結果、この患者は、隔離期間中はもちろん、隔離後の一か月、精神的に安定した状態で任務に従事することができました。



 2021年10月の国際航空運送協会(IATA)の推計によると、2022年の国際線渡航者数はパンデミック前の75%に、2022年の国内渡航需要はパンデミック前の93%に成長すると予測されています。また弊社の渡航者追跡ツールである"トラッカー"での分析によると(分析期間:2020年5月~2021年8月)、海外出張数は、毎月10%ずつ増加し、パンデミック後の国内出張数は7倍に増加したという結果がでました。

このような状況を受け、組織では国内外渡航者に対して、以下のような事前準備や対策をしておく必要があります。

 • 渡航先の情報:正確で、信頼性のある情報を収集する(COVID-19関連リスクやCOVID-19以外のリスク)
 • 渡航中や渡航先での十分な感染予防対策
 • 精神的レジリエンスへのサポート(隔離時、国境政策の変更時、PCR結果が陽性になった場合など)
 • メディカルキットの用意(市販薬、応急処置、迅速検査キット)

引き続き、多層性に予防を重ねながら、感染症対策をしていくことが必須です。

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セキュリティ面での海外渡航における課題や留意点を認識したうえで、従業員の方のサポートをしていくことは非常に重要です。以下のように課題や留意点を取り上げました。

海外渡航における課題点

 • COVID-19関連規制が世界中で導入されたことにより、出入国や国内移動などのビジネスに必要な移動が困難になった。

 • 各種規制やCOVID-19に伴う新たな治安リスクにより、従来の渡航管理計画ではCOVID-19影響下での海外渡航に対応できない。

 • 日々変わる各種規制や不安定化する治安状況などの海外渡航に必要な包括的な情報の入手が困難である。

海外渡航における留意点

1)規制変更により渡航が延期するリスク
 • 出入国が不可能になったり、追加の手続きが必要になる可能性
 • 現地で身動きがとれなくなる可能性
2)規制違反によるトラブルに巻き込まれるリスク
 • 行政処罰を課されたり、現地コミュニティとトラブルになる可能性
3)治安悪化時の退避が困難になるリスク
 • 各種規制により、退避先や手段が限られる可能性
 • 各種規制により、必要な手続きに時間がかかる可能性


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 会員様限定公開にて、メンタルヘルス、渡航再開についてより具体的なアドバイスや対応策をお話させていただきました。

安全に渡航再開をするためには?
 • ワクチン接種を済ませた健康な方を渡航させる
 • 各国の最新医療情報や病院情報をアシスタンス会社から入手する
 • 渡航者の健康診断(1回/年)を行う
 • 持病がある場合にはかかりつけ医にかかり体調管理する
 • 渡航先の移動手段の確認をする
 • 職場が安全に働ける環境かを確認する
 • 滞在するホテルが安全かを確認する
 • 渡航先の事業所では、簡易的な抗原検査を定期的に導入しているかを確認する
 • メンタルヘルスサポートを提供する
 • 保険(COVID-19に罹患した場合、隔離施設費用、精神疾患など)の確認
 • 十分な予防対策を行う(マスク着用、衛生、ソーシャルディスタンシング、人混みをさけるなど)

メンタルヘルスについてのアドバイス
 メンタルヘルスサポートにおいては、メンタルヘルスについて気軽に上司に相談できない、職場でのメンタルヘルストレーニングが導入されていないような"反応型"の組織ではなく、今後は、良好なメンタルヘルス維持の必要性や積極的なサポート体制が組織文化に組み込まれているというような"改善型"の組織を目指していく必要があります。具体的には、緊急時にサポートできるようなホットラインや、慢性期の方の従業員のフォロー、メンタルヘルス関連の教育などを取り入れていくことが重要です。

 最後に野村医師からは、多層性に予防を重ねて感染対策をしていくことが非常に大事であるとアドバイスしました。

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 セキュリティの観点から、安全に渡航再開を実施するにあたり、どのように対応していけばよいのでしょうか。

 まずは、事前に渡航前、渡航中、渡航後の各プロセスにおいて、対応すべき項目を決めておき、実施することが必須となります。例えば、渡航前には渡航先のリスク評価をしておく、渡航中には現地情報の治安や規制に関する最新情報を取得できるようにする、緊急退避の判断が求められたときに素早く意思決定ができるように承認プロセスを決めておく、渡航後は帰国者への心身のサポートを行う、ということを決めておく必要があります。

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 Q&Aセッションでは以下の質問に対し回答しました。

Q)アフリカの渡航先でマーケットエリアに行く必要があります。どのぐらい込み合っているかわかりませんが、不特定多数の人が行き来をする場所なので、リスクがあると考えたほうがよいのでしょうか。

A)
 • マーケットエリアで歩きまわって息をする程度であれば、マスクの着用、ソーシャルディスタンシングなどの基本的な感染予防対策をしていれば大丈夫かと思われる。
 • ビジネスで長時間人と話しをする場合には、感染予防対策をさらに厚くすることが重要
 • マーケットエリアがどのような場所かは不明だが、しっかりと換気がされている環境でビジネスを行う方がよい。例えば自然換気の場合、窓が開いている場所で、機械換気しかない場合、エアコンがある場所で話しをした方がよい。その際には必ずマスク着用の上で話をする。
 • マスクを取らないといけないような会食やカラオケは避ける
 • ブースター接種をしてから渡航する(接種後はある程度の時間をおいてからでないと抗体が産生されていないため、渡航時期を計算する)

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ご参加された皆様からは、以下のようなフィードバックをいただきました。

 • 様々な情報が氾濫するなか、プロフェッショナルな意見や知見を得られて有意義だった
 • 出張再開に関する調査結果から、各企業の動向傾向が分かり、非常に参考になった
 • COVID-19影響下で海外出張する際の想定されるリスクや留意点が分かった
 • 従業員へのメンタルケアの重要性を認識できた


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 私たち、インターナショナルSOSは、いつでもどこでも会員組織の従業員の皆様の健康と安全を守るために、日々サポートさせていただいております。現在、東京アシスタンスセンターでは、世界中のインターナショナルSOS専属医師や医療専門家、セキュリティ専門家、ロジスティック専門家、プロバイダーと連携をして、世界中の会員の皆様を全力でサポートしています。ご相談やご不安な点がございましたら、お気軽に東京アシスタンスセンターまでご連絡ください。
東京アシスタンスセンター(24/7):+81-3-3560-7170

 また、海外へ事業を展開されている組織の経営者の方、人事およびリスクマネジメントご担当者の方におかれましても、このような状況下の中で、どのように貴組織の従業員の皆様の健康と安全を守りながら、安全に事業を継続すればよいのかのアドバイスやリスクマネジメントへの体制づくりをお手伝いいたしますので、ぜひ弊社までお問合せ下さい。


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