Blog on Duty of Care 海外における企業の安全配慮義務

ウェビナーレポート(2/1(火)開催)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認されてから、約2年が経過しました。オミクロン株の感染が全世界で拡大しており、いまだ収束の見通しは立っていない状況です。

 COVID-19の感染拡大は、組織にとって従業員の健康と安全対策を講じながら、生産性は損なわずに、どのようにして安全に事業を継続していくのかを再考するきっかけになりました。刻々と変化するCOVID-19の感染状況、自然災害、テロ、暴動など予測不可能な状況下において、迅速に従業員の健康と安全対策を講じていくことが、安全配慮義務の観点からますます必須となっています。


 2022年は従業員の方の健康と安全を守りながら事業を進めていくためにどのような点において留意すればよいのかについて、メディカル・ディレクター葵医師、セキュリティ・ディレクター黒木、セキュリティ・マネージャー生駒より2022年2月1日に開催したウェビナーでお話させていただきました。

以下が、ウェビナーの内容です。

  • アンケート「リスク展望2022 」の調査結果のご紹介
  • インターナショナルSOSリスクマップ2022の変更点
  • COVID-19&医療搬送の相違点と留意点(2021年と比較して)
  • メンタルヘルス(ケーススタディご紹介)


  ※以下トピックは、会員様限定公開

  • オミクロン株
  • COVID-19ワクチンの最新知見
  • アジア地域の医療状況
  • 注目すべきセキュリティリスク(ミャンマー・台湾)

                                                                 ****

  まず、2021年9月~10月に全世界で実施したアンケート「リスク展望2022 」の結果をご紹介しました。本調査は、組織における健康と安全、リスク軽減について第3者調査機関であるIpsos MORIがインターナショナルSOSの代わりに実施し、75ヵ国にわたる1,000名以上(うち日本からは126名)のリスク管理者および担当者からの回答を得ました。


 2021年において国内外出張者のリスクが増加したと回答した割合は、全世界で67%、日本では67%でした。また2022年において従業員の健康およびセキュリティリスクは"増加"または "変化しない"と回答した割合は、全世界で3分の2以上(68%)、日本においても3分の2以上(66%)でした。


 組織が直面している従業員の健康と安全を守るための課題は、以下の項目があがりました。
全世界と日本とのデータを比較してみると、課題としている項目の割合の違いが見て取れます。
COVID-19に対処する十分なリソースを持つことを課題としていると回答した割合は、グローバルでは33%に対し、日本では59%でした。

<従業員の健康と安全を守るための課題>
従業員の健康と安全を守るための課題 small3.png 

 
 2022年に従業員の生産性が低下すると予想される原因のトップ5は以下のとおりです。
 引き続き、2022年も以下の点に留意しながら対策を講じ、生産性を低下させることなく事業を進めていくことが必須となります。
   COVID-19
   メンタルヘルス問題
   異常気象を含む自然災害
   移動・渡航に関する懸念
   安全上の脅威と政情不安

 COVID-19の感染対策を講じる一方で、見落としがちなセキュリティリスクについても留意が必要です。以下が、2022年組織の生産性が減少する原因となり得るセキュリティリスク要因です。

生産性を低下させるセキュリティリスク要因 small2.png

 
 リスク展望の調査結果やワークフォース・レジリエンス評議会および当社の独自データをもとに、インターナショナルSOSが作成した来年の予測トップ5は以下の通りになりました。

1. 2022年にはCOVID-19、COVID-19後遺症、メンタルヘルスが従業員の欠勤や退職に繋がり、従業員の生産性を低下させる主な要因となる。
2. インフォデミックが従業員を守るうえでの複雑さを悪化させ続ける一方で、安全配慮義務は新たな健康・安全対策、従業員の期待、および法規制遵守によって再形成される。
3. パンデミックによって中断された活動は、2023年までに一定の安定性を得る。これは、組織が健康とセキュリティのリスク管理を競争上の優位性として活用し、従業員の維持や、出張などの活動再開への意欲をサポートするためである。
4. 市民の混乱や地政学的な不安定さがパンデミック以前のレベルを上回ることから、組織は急速に変化するセキュリティ環境に不意を突かれるリスクがある。
5. 気候変動により、感染症、異常気象、社会経済的緊張など、気候に影響を受けやすい災害の頻度と影響が増幅する。

                         ****

 医療面については、葵医師より以下のトピックについてお話させていただきました。

インターナショナルSOSリスクマップ2022年版の変更点
 インターナショナルSOSでは、毎年独自のデータにより、各国、各地域の医療リスク評価、セキュリティリスク評価を反映させたリスクマップを作成しています。2022年版はどの国の医療リスク評価が変更になったのか説明しました。

医療リスク評価変更点.png

 
医療リスク評価が変更された要因は以下の通りです。
ニカラグア共和国&ホンジュラス:オペレーションリスクが上昇
スリナム共和国:マラリアの根絶
スリランカ:公衆衛生の改善、専門医診療の質の上昇

 COVID-19と医療搬送に関するトレンドの変更(2021年7月と2022年1月を比較して)
コロナで重症化するケースがほとんどみられなくなった
日本人のコロナ患者の搬送は、デルタ株の収束を期に激減(世界的なトレンド)
家庭内感染や職場感染が増加
小児例が増加→ワクチン未接種人口が多いため、感染後遅発性に起きる小児多系統炎症性症候群に注意
医療逼迫や酸素・薬剤の逼迫の報告はほとんど聞かない (ワクチンの普及、低病原性の株)
  ただし、医療従事者の感染による病院機能の制限は起きている
ICUや一般病床が確保できないことよりも、検査体制の逼迫や療養施設の逼迫の問題がメイン
確定診断や隔離基準、渡航制限ポリシーの頻回の変更
軽症、低リスク患者のモニタリングや報告の頻度の変更
モニタリング期間の短縮(14日からローケーションの医療水準に応じて、7-10日に短縮)
非コロナ症例の増加

 また、2022年、COVID-19に関して以下のような展望を示しました。
オミクロンが最後ではなく、今後大なり小なりの流行がくる(先行流行した国に似た状況になる)
ルールの頻繁な変更 (診断方法・公衆衛生対策(濃厚接触者の定義、隔離期間の変更)・渡航規制)
社会機能維持に重点シフト
新規感染者数ではなく、重症者数にシフト
Self-Test, Self-Careの方向へ
ワクチン完了者はより制限や介入が少なくなる

                         ****

 COVID-19パンデミック以降、私たちの生活様式は大きく変化し、働き方も大きく変化しました。パンデミック前と比べて、在宅勤務によりオフィスに出社しないことが多くなったことから、人とのコミュニケーションが少なくなり、そのことがメンタルヘルスにも影響を及ぼしています。

 インターナショナルSOSでは、従業員の方および帯同家族の方のメンタルヘルスサポートを提供させていただいております。2020年9月にサポートさせていただいた事例をご紹介しました。

 サポートさせていただいた方は、20歳代の男性で、パニック障害やうつ病の既往歴があり、英語があまり得意ではありませんでした。シンガポールへ1ヶ月間出張へ行かれたのですが、当時シンガポールへの入国はとても厳しく、政府が指定したホテルに1週間滞在しなくてはいけませんでした。空港に到着してからすぐに行き先を伝えられずにバスでホテルに移動し、政府の監視下で部屋を一歩もでることなく1週間隔離されました。食事は一日3回ドアの前に置かれる状態だったそうです。
 英語が不得意だったこと、部屋から一歩も出ることができなかったこと、近隣の私立の日系クリニックでは初診は対面のみの受付であったことなど、様々な要因が重なり、不安な症状が再発してしまいました。そこで、東京のアシスタンスセンターの日本人医師が症状を伺ったうえで、日本人のカウンセラーにつなぎ、オンラインでセッションをうけていただきました。さらに、弊社の日本人医師からは、この患者は睡眠導入剤を持参していましたが、症状に応じた服用方法をアドバイスしました。その結果、この患者は、隔離期間中はもちろん、隔離後の1ヶ月、精神的に安定した状態で任務に従事することができました。また、日本に帰国後も残存している症状の訴えがあったため、かかりつけ医で引き続き対応することとなりました。

 葵医師からは、COVID-19への対応だけではなく、COVID-19以外の健康面(マラリヤやデング熱などの感染症、メンタルヘルス、心筋梗塞や脳卒中などの持病、勤務中のケガ)などについても健康診断などを定期的にうけたりしながら、予防および対策をとっていく必要があるとお伝えしました。 

                          ****

 会員様限定公開にて、オミクロン株、COVID-19ワクチンの知見、治療薬についてお話させていただきました。アジア各国の医療トレンドについては、別途録画をさせていただきました。ウェビナー(2/1開催分)の録画と合わせて録画リンクをご提供させていただきます。ご視聴をご希望のお客様は、リクエストフォームにご記入をお願いします。後日担当者よりご案内させていただきます。

 オミクロン株について
   再感染リスク:高い
   感染伝搬性は、デルタより高い
   再感染リスク:高い
   倍加時間:より早い(2日未満)
   潜伏期間:より短い(5→3日)
   ウィルス排出期間:より短い(発症から7~9日、症状軽快から2日間)
   症状: 上気道症状がメイン(鼻汁、頭痛、倦怠感、咽頭痛)
   病原性: 有症状期間は短縮、入院率低下、酸素需要低下
   ワクチン効果:従来株に比べ減弱するが効果あり(特に重症化予防)+ブースターは重要

 オミクロン株の病原性は弱いと言われていますが、オミクロン株が流行中のアメリカ主要都市では、重症者、死亡者が急増しているため、注意が必要。

 COVID-19ワクチンの知見
自然感染よりも、ワクチン接種、更に交差接種をしたほうがより強い細胞性免疫、液性免疫反応を誘導するとみている。

 COVID-19の治療薬について
経口薬、点滴薬については、自己判断での使用は危険なので、医師のアドバイスをもとに使用することを推奨。

                          ****

 セキュリティチームからは、2022年注目すべきセキュリティリスクとして、ミャンマーと台湾を取り上げました。

 セキュリティ・マネージャー生駒からは、政権交代から1年が経過したミャンマーに関して以下お話しました。

   政権奪取以降の治安環境の変化は?
   -2021年2月~4月上旬:ミャンマー国軍による政権奪取、衝突・不服従運動
   -2021年4月以降:爆発・武力衝突・暴力へ(デモの発生頻度は低下)
   現状のリスクは?:都市部(ヤンゴン)では暴力事案に巻き込まれる傾向
   事前にどのような対策が必要?
   -信憑性の高い情報の収集
   -事業継続計画や退避計画の見直し
   -連絡・伝達手段の見直し
   -籠城待機への備え

 セキュリティ・ディレクター黒木からは、中国が台湾へ2022年に軍事侵攻を始めるのかについての見立て、台湾有事に備えて、早期退避を行うための計画の策定や軍事侵攻が始まってしまった場合の準備など、あらゆる事態を想定した準備が必要となるとお伝えしました。

                           ****

 Q&Aセッションでは以下の質問に対し葵医師が回答しました。

Q)
COVID-19に感染すると治療後も検査結果が陽性になると聞きます。例えば海外で治療を余儀なくされ、治ったタイミングで帰国しようとしたときに、現地出国時の検査や日本入国時の検査で陽性と出てしまう場合、帰国可能なのでしょうか。またそういったケースの取り扱いはありましたでしょうか。

A)
日本政府は、出発前72時間以内の陰性証明書を提出できない場合は、日本への上陸は認められないとしています。また医師が発行するCOVID-19非感染証明書(COVID-19に以前感染したが完治しているという証明書)は認められていないと認識しています。弊社では、現地でCOVID-19に感染し、完治した方に関しても、陰性になるまで待つという対応をとっています。陰性証明書なしで帰国するケースは対応したことがありません。

Q)
海外赴任者や家族のメンタルケアで特に留意、対策すべき事項がありましたら教えてください。
A)
海外へ行く前に、ご自身のメンタルがコントロールされているかを確認することが重要で、今服用している薬でコントロールできるのか、服用している薬が現地で手に入るのかという点も第一に確認しておく必要があります。
環境の変化でメンタルの不調が起きてしまうことはよくあります。例えば、帯同家族の方が慣れない環境の中、どうしても一人の時間が増えてしまいます。そのことでストレスを感じてしまう。またお子様の場合、学校に登校するけれども環境になれなかったということでストレスを感じてしまう。そのような部分については、会社や環境でバックアップをしていくしかないと思います。環境の変化、職場の変化、昇進などでプレッシャーを感じてしまう場合に、鬱などメンタルの不調が引き起こされることが多いので、組織は、従業員の方のパフォーマンスが今どのくらいできているのかなどしっかり見守りつつ、いつでも相談にのれるような体制を作る必要があると考えます。

                           ****

 ご参加されたお客様からは、以下のようなフィードバックをいただきました。

オミクロン株に対する認識や対策が明確になった
リスク展望について理解できた
ミャンマー、台湾情勢の情報が非常に参考になった
COVID-19に気を取られがちになってしまう中、それ以外のリスクについても認識することができた

 オミクロン株の感染が急拡大していることから、感染症対策を優先事項としている組織が多く、また最新の医療とセキュリティ情報取得、コミュニケーション方法への対策についても優先事項として対応されていることもアンケート結果よりわかりました。

                            ****

 
私たち、インターナショナルSOSは、いつでもどこでも会員組織の従業員の皆様の健康と安全を守るために、日々サポートさせていただいております。現在、東京アシスタンスセンターでは、世界中のインターナショナルSOS専属医師や医療専門家、セキュリティ専門家、ロジスティック専門家、プロバイダーと連携をして、世界中の会員の皆様を全力でサポートしています。ご相談やご不安な点がございましたら、お気軽に東京アシスタンスセンターまでご連絡ください。
東京アシスタンスセンター(24/7):+81-3-3560-7170


 また、海外へ事業を展開されている組織の経営者の方、人事およびリスクマネジメントご担当者の方におかれましても、このような状況下の中で、どのように貴組織の従業員の皆様の健康と安全を守りながら、安全に事業を継続すればよいのかのアドバイスやリスクマネジメントへの体制づくりをお手伝いいたしますので、ぜひ弊社までお問合せ下さい。


 健康面と安全面のリスク対策について詳しい説明をご希望のお客様は、こちらよりお問合せ下さい。


このウェビナーの録画のご視聴ををご希望のお客様は、こちらよりリクエストフォームにご記入ください。
後日担当者より録画リンクを送付させていただきます。

インターナショナルSOSは、海外で活躍される企業や
その社員の方々に医療とセキュリティのアシスタンスサービスを
提供しています。詳細は下記webサイトをご覧ください。
http://www.internationalsos.co.jp/

Blog on Duty of Care ~ 海外における企業の安全配慮義務ブログ ~ Duty of Careとは? Blog on Duty of Care