イスラエルと、パレスチナのイスラム抵抗運動「ハマス」との間で継続している紛争により、欧州全体の安全保障環境の悪化が懸念されています。その中でも特に、近年、減少傾向にあったイスラム過激派による攻撃の復活が危惧されています(2022年、欧州でイスラム過激派による襲撃事件で死亡したのは2人で、2017年の62人から大きく減少しています)。
今回の紛争発生後、10月13日にアラス(フランス)で1人が刺され、2人が殺害されました。また、ブリュッセル(ベルギー)では銃を持った男がスウェーデン人2人を殺害しました。
フランスのジェラルド・ダルマナン内務大臣によれば、アラスにおける事件はイスラエルとパレスチナでの事件と関連していることを示唆した上で、フランス政府はテロ警戒レベルを「緊急攻撃(emergency attack:3段階評価で最高)」に引き上げました。また、ベルギーでは、脅威レベルが3(4段階評価)に引き上げられ、深刻な脅威であることが示されました。両事件ともに、犯人は単独犯のようですが、一部では過激派組織「イスラム国」との関係性も指摘されています。
ベルギーでのテロ事件を受けて、フランスは国境警備を強化すると発表しました。また、イタリア政府は10月21日、スロベニアとの国境管理を10日間にわたり復活させることを決定しました。イスラエルとハマスの紛争を考慮し、「暴力行為の脅威レベルが高まっている」ことを、その理由に挙げています。さらにスロベニア当局は、クロアチア及びハンガリーとの国境で監視を行うことを決定しました。
通常、シェンゲン協定域内では、一般的に国境管理は認められていませんが、このように一時的な国家安全保障措置として実施されることもあります。
*こちらの記事は、弊社「プレミアム・アドオン」サービスにご契約いただいているお客様向けの英文レポート ”Monthly Security Forecast”の一部を和訳したものです(2023年11月1日時点の情報となります)。
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