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【専門家が世界を歩く】海外医療と安全の現地観察ノート Vol.2|ナイジェリア・ラゴス編

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こんにちは。今回は、「専門家が世界を歩く」シリーズの第2弾。ナイジェリア最大の都市ラゴスを訪れた際の体験を、セキュリティの専門家としての視点を交えながら、少しユーモアも添えてお届けします。日本の皆さまが、もしナイジェリアに出張や駐在することになったら?そんなときに役立つかもしれない、リアルでちょっと不思議なラゴスの世界をご紹介します。

「専門家が世界を歩く」シリーズの第1弾(タイ・バンコク編)はこちらからご覧いただけます

1. ナイジェリアってどんな国?

ナイジェリアのラゴスの様子

人口は約2億3,000万人。アフリカ最大の人口を誇り、若年層が多く、経済成長が期待される「最後のフロンティア」とも呼ばれています。IMFの予測「地域経済見通し(サブサハラ・アフリカ)」ではGDP成長率は3.9%。都市部では中間所得層が増え、消費市場としての魅力が高まっています。

日本企業の進出も徐々に進んでおり、外務省の調査「海外進出日系企業拠点数調査(2024年)」では2024年時点で52社がナイジェリアに拠点を構えています。とはいえ、進出にはそれなりの覚悟と準備が必要です。現地のインフラや治安、文化的な違いを理解した上で、慎重な判断が求められます。

ナイジェリアの治安についての評価

ちなみに、インターナショナルSOSにおける治安面での評価(5段階中5が最も高リスク)は以下の通りです。

  • ナイジェリア全体では4(High:都市部でも強盗・誘拐のリスクあり)
  • アブジャ(首都)は3(Medium:比較的安定しているが、油断は禁物)
  • ボルノ州(北東部)は5(Extreme:武装勢力の活動が続いており、渡航は非推奨)

こうした背景から、ラゴスを含む都市部でも安全対策は必須です。住宅街の通りにフェンスを設け住民以外の出入りが警備されているゲート付きコミュニティの利用、信頼できる輸送サービス、そして緊急時の医療搬送体制を整えることが重要です。

2. ラゴスってどんな街?

ナイジェリアのラゴスの地図

ラゴスはナイジェリアの経済・商業の中心地。ビクトリア・アイランド(VI)、イコイ(Ikoyi)、レッキ(Lekki)、イケジャ(Ikeja)など、エリアごとに性格が異なります。

  • VI・Ikoyi:高級住宅地やビジネス街。ゲート付きコミュニティが整備され、警備体制も強固。外国人駐在員の居住地として人気。
  • Lekki:開発が進む新興エリア。場所によって治安にばらつきあり。
  • Ikeja:行政の中心地で空港も近いが、犯罪発生率は高め。渋滞も多く、移動には注意が必要です。

一方、ラゴス島の旧市街や郊外エリアでは、スラムやインフラ未整備の地域もあり、徒歩移動は非推奨です。街の雰囲気はエリアによって大きく異なり、同じラゴスでも「別の都市か?」と思うほどです。

3. ラゴス到着、第一印象は?

ナイジェリアのラゴスの道路

私にとって今回が初めてのナイジェリア訪問。飛行機が高度を下げると、曲がりくねった川と豊かな林が広がり、一瞬アマゾンかと思うような景色が見えました。空港に着陸すると、あいにくの雨模様で窓の外はグレー一色。どこか薄暗い印象でした。

ところが、ボーディングブリッジに足を踏み入れた瞬間、一面の赤。壁も床も赤系で、先ほどまでのグレーとの対比が強烈でした。入国手続きでは、白衣の係員による黄熱病予防接種証明書の確認、入国審査、税関申告書のチェックと続きます。

ナイジェリアのラゴスの空港

驚いたのは、胸にパスを下げた業者風の若者が、渡航者の手続きをサポートしていたこと。現地の人に聞いたところ、これはライセンスを持った業者による合法的なサービスとのこと。検疫官や入国審査官の対応は礼儀正しく柔らかい物腰で、緊張が少し和らぎました。

空港の構造はやや複雑で、到着エリアと出発エリアを隔てるガラス壁には隙間があり、通り抜けられる状態。通路には大量のベンチが無造作に並べられていて、空間の使い方に戸惑いを覚えました。ドバイ空港との違いを強く感じながら、ラゴスの空気を吸い込み始めました。

4. MOPOLとともに走るラゴスの街

MPOLの車両とセキュリティ専門家

写真左:会うたびに賄賂や供与を要求してくる気のいいMOPOLリーダー/写真右:左は手配した車両、右はMOPOL

今回の移動には、インターナショナルSOSのプロバイダーの車両と、MOPOL(Mobile Police)を利用しました。ピックアップトラックに青と赤のライトを装備し、運転手を含む3名が警備にあたります。2名は自動小銃を携行しており、見た目はものものしいですが、対応は親切でした。

ラゴスでは交通渋滞や信号のない交差点が多く、移動は一筋縄ではいきません。MOPOLはサイレンを鳴らして流入を補助したり、片側通行路を逆走して先導したりと、まるで映画のワンシーンのような動きでスムーズな移動を支えてくれました。

ナイジェリアのラゴスのリスクマップ

緑色で網掛けしたエリアではエスコートなしでの移動が可能であると評価しています。

弊社では、地図上の安全エリア内のみの移動についてはMOPOLの利用を必須とはしていませんが、エリア外を含む移動では強く推奨しています。渋滞時には車両が停止する時間が長くなり、強盗や誘拐のリスクが高まるためです。

実際に走行していると、舗装が不十分な道路や露店が並ぶエリアもあり、車両のスピードが落ちる場面では周囲への警戒が必要です。MOPOLの存在は、物理的な安全だけでなく、心理的な安心感も与えてくれました。彼らの動きは、まるで都市の迷路を熟知したナビゲーターのようで、ラゴスの混沌を切り裂く頼もしい存在でした。

5. ラゴスのリアル:停電と賄賂

ナイジェリアのラゴスのホテル

一流ホテルでも停電は日常茶飯事。自家発電機があるとはいえ、数分間の停電が続くこともあり、復電してもエアコンが再起動しない、電子ロックが作動せず部屋に入れないという経験もしました。

この時は、フロントで改めて電子ロック登録をしてもらい、難を逃れることができました。停電時はドアが解錠されることが無いため、セキュリティ上のアドバイスとしては、いつでも連絡がつくように携帯電話の予備電源を持っていくことをおすすめします。

また宿泊施設の設備については、非常時の避難経路や通報手段の確認が欠かせません。セキュリティ専門家としてホテルの安全性を評価するときは、例えば通信手段であれば、ホテルの敷地内における携帯電話の不感地帯や、衛星電話設備の備え付け、通信設備独自のUPSなどの有無など、細かな点まで見ています。

ナイジェリアのラゴスのホテルにある避難経路

こうした現地ならではの事情は、ホテル内に限りません。視察の道中でも、思わぬ光景を目にしました。通り過ぎる車から次々に紙幣を受け取る若者の姿です。しばらく様子を見ていましたが、特に商品などを渡している様子はなく、ただ紙幣を受け取るのみ。紙幣を受け取っているのと反対の手には、おびただしい量の紙幣が札束となって握られているのが見えます。

あまりにも気になったので、車に同乗していた現地コーディネーターに尋ねたところ…物売りかと思いきや、「賄賂」だとのこと。若者は警察官の使い走りで、少し先には制服姿の警官がポケットに手を入れて余裕の表情で車を眺めていました。支払わない業者はペナルティを受ける可能性があるそうです。

これほど大胆な汚職の現場を目の当たりにしたのは初めてで、驚きとともに、ナイジェリアの現実を垣間見た瞬間でした。とはいえ、現地の人々は明るく親切で、日々の生活をたくましく送っている姿に感銘を受けました。混沌の中に秩序があり、混乱の中に日常がある。それがラゴスの魅力でもあります。

6. ラゴスは「リスクとチャンスが隣り合わせの都市」

ナイジェリアのビクトリアアイランドのトライシクル

ラゴス本土側で走っている3輪タクシーもIkoyiやVictoria Islandでは全く見かけませんでした。

ラゴスは、確かにリスクの多い都市です。しかし、同時に成長と活気に満ちた都市でもあります。治安対策をしっかり講じ、安全なエリアを選び、信頼できるパートナーと行動すれば、ナイジェリアでのビジネスは十分に可能であると感じました。

最後のフロンティアであるアフリカ。その中でもラゴスは、ある現地の人から「リスクとチャンスが隣り合わせの都市」と教わりましたが、今回の滞在ではその両面を肌で感じることができました。
これからナイジェリアに出張・駐在される方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。

現地での体験は、教科書には載っていない「生きた情報」として、きっと皆さんの安全と成功に役立つはずです。未知の世界に足を踏み入れる勇気と、備えあれば憂いなしの心構えを持って、ラゴスという都市に向き合っていただければと思います。

7. 実はラゴスにはInternational SOSのクリニックがあります

ナイジェリアのラゴスのMPOLとSクリニックの救急車

ラゴスと聞くと「医療体制は大丈夫なの?」と不安になる方も多いでしょう。実は、国際基準の医療サービスを提供するインターナショナルSOSクリニックはそんな方々にとって心強い存在です。

ラゴスクリニックの詳細はこちら(英語サイト)からご覧いただけます。

今回、私はこのクリニックを訪問し、院長や所属医師から直接説明を受けました。印象的だったのは、彼らの誠実でプロフェッショナルな姿勢と、自分たちの使命に誇りを持っている様子です。診療室や設備を見学しながら、「ここなら安心して任せられる」と確信しました。

ナイジェリアのラゴスのインターナショナルSOSクリニック

さらに、このクリニックは一般診療だけでなく、緊急時には適切な医療が受けられる国への医療搬送にも対応しています。現地で体調を崩した場合、信頼できる医療機関があるという事実は、心理的な負担を大きく軽減します。

インターナショナルSOSの一員として、現場でその使命を体感できたことは、私自身にとっても誇らしい瞬間でした。写真でご紹介する院内の様子からも、その安心を感じ取っていただけると思います。

海外出張者・駐在員の医療・セキュリティリスク対策は万全ですか?

インターナショナルSOSは、アフリカ地域をはじめ、アジア、欧米、中東など世界中で働く従業員の皆さまの、健康と安全を手厚くサポートいたします。

  • 90カ国以上1,200カ所以上の拠点から医療・セキュリティの課題を支援
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  • 日常の対応~緊急医療搬送や国外避難など、緊急対応も経験豊富