コロナ禍を経て「メンタルヘルス」というキーワードはより注目されるようになりました。
特に異国の地で暮らす海外駐在員や出張者にとって、ストレス管理やメンタルヘルスケアは重要な課題です。
インターナショナルSOSは約40年にわたり世界各国の海外駐在員や出張者の健康・安全管理をご支援してきました。
本記事では海外のメンタルヘルスの現状や具体的な対策を紹介するとともに企業が取り組むべきメンタルヘルス施策についても解説します。
1. 海外メンタルヘルスの現状と重要性
異国で働く海外駐在員や出張者は文化の違いや言語の壁、社会的孤立などによる精神的負担が大きく、企業の適切なサポートが求められています。
この章では海外におけるメンタルヘルスの現状と重要性について解説します。
1-1. メンタルヘルスとは?
メンタルヘルスという言葉の意味は個人の感情や思考、行動に影響を与える心の健康を指します。良好なメンタルヘルスはストレス管理や意思決定、人間関係の維持に直結しており、特に海外駐在員や出張者にとって重要な要素です。
逆にメンタルヘルスが損なわれるとうつ病や不安障害などを発症し、仕事、社会生活に大きな影響を与えてしまいます。
特に慣れない異国の地で海外生活をしている従業員にとって、グローバル化の進む現代では良好なメンタルヘルスの維持が欠かせないものとなっています。
1-2.コロナ禍によるメンタルヘルス課題と対応
コロナ禍は過度に移動を制限されたり人との接触機会が少なかったりしたこともあり、社会的孤立感やリモートワークによる精神的負荷を増大させました。
海外駐在員・出張者はロックダウンや移動制限による孤独感や不安感を経験し、大きなストレスを受けました。
これを皮切りにストレス要因に対応するため海外ではコミュニティの一体感やオンラインサポートの充実など、新しいメンタルヘルスケアへの取り組みが見られるようになりました。
1-3. メンタルヘルスに対する海外と日本の意識の違い
実は海外と日本ではメンタルヘルスに対する意識にいくつかの顕著な違いがあります。
海外、特に欧米諸国の企業では考え方、国籍などの多様性が尊重されておりメンタルヘルス問題を公然と議論し、支援を求めることが一般的です。
一方、日本ではまだメンタルヘルスへの理解が 十分に浸透しておらず、企業内での効果的なサポート体制が十分でないケースも見受けられ、症状があっても自身が勤める企業に支援を求めることが難しい場合があります。
この文化的意識の違いは対策やサポートのアプローチにも影響を及ぼしており、日本はメンタルヘルスに対する理解や支援体制が遅れていると言われています。
2. メンタルヘルス対策と企業の取り組み
世界的にメンタルヘルスの問題は深刻化しており、年々拡大しています。ここからは政府、企業、個人という視点でメンタルヘルス対策と具体的な取り組みについてお伝えします。
2-1. 政府や自治体が提供している支援制度
海外では多くの国がメンタルヘルス支援に積極的な政府の介入をおこなっています。
例えば、 英国は「NHS(国民保健サービス)」を通じて無料のカウンセリングや精神医療サービスを提供しています。また、オーストラリアでは政府が主体となり精神的健康の向上を目指すキャンペーンを展開しています。
日本では2015(平成27)年12月から労働安全衛生法に基づきストレスチェック制度が義務化されており、また、国民健康保険や社会保険を通じてメンタルヘルスに関する支援を受けることが可能です。
ストレスチェック制度の対象の事業会社がストレスチェックをおこなわず、その結果を労働基準監督署に報告しない場合、労働安全衛生法および労働契約法に違反し、最大50万円の罰金が科せられる可能性があります。
2-2. 企業が実施しているメンタルヘルス施策
国際的な企業では従業員のメンタルヘルスを重視した施策が実施されています。
一部の企業では従業員のメンタルウェルネスを促進するプログラムを実施し、メンタルトレーニングやカウンセリングの機会を設けています。
例えば、ある企業ではセルフマネジメント能力の向上やリーダーシップの発揮、さらにはメンタルヘルスの維持・向上を目的としたプログラムを提供しており、世界中の多くの企業や個人に導入され、高い評価を受けています。
また、別の企業では運動、栄養、メンタルレジリエンスの3つに焦点を当てたプログラムを従業員向けに実施しており、従業員の健康状態の改善を目指しています。
このプログラムは多くの国の従業員が参加しており健康指標の改善が報告されています。
2-3. 個人で活用できるメンタルヘルスサービス
個人が自主的に利用できるメンタルヘルスサービスも数多く存在します。
これらのサービスは瞑想やマインドフルネスを通じてストレスを軽減し、心の健康のサポートを目的としています。
また、オンラインセラピーを通じて、個人でも手軽にプロフェッショナルなサポートを受けることができるサービスも増えており、メンタルヘルスの維持・向上に役立っています。
この章でお伝えしたように、企業が独自に実施するメンタルヘルス施策は組織文化に適した対応が可能ですが、社内リソースの制約や専門知識の不足が課題となることが多々あります。
個人向けサービスは手軽に利用できる一方で、従業員が自主的に活用しなければ効果が限定的です。
インターナショナルSOSでは企業向けにカスタマイズされたグローバル対応のメンタルヘルスサポートを提供しており、世界で働く従業員の心身の健康を守るためプロフェッショナルによるオンラインカウンセリングや相談窓口を設けています。
従業員のメンタルヘルス対策をより効果的に進めるために、サービスの導入もぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
3. 海外駐在員・出張者が直面するメンタルヘルス課題と解決策について
ここまでメンタルヘルスの現状と具体的な対策・サポートについてご説明してきました。
ここからは海外駐在員と出張者のメンタルヘルスケアにフォーカスしてお伝えします。
3-1. 異文化適応ストレスとは?
海外駐在員や出張者は異文化適応ストレスという特有の精神的課題に直面することが多いです。
このストレスは文化の違いからくる誤解、言語の壁、価値観の違いによるコミュニケーションの問題、社会的孤立感などからメンタルヘルスに大きな影響を及ぼします。
適応の過程で感じる不安や混乱をうまく管理しないと、うつや不安障害を引き起こす可能性もあります。
3-2. 海外生活でのメンタルヘルス対策
海外でのメンタルヘルスを維持するためには日常生活の中でストレスを管理する仕組み作りが重要です。
あくまで一例ではありますがリラックスできる趣味を持つことや、自分の好きなことをする時間をもつ、仕事について考えない時間を作る、定期的に帰国することでホームシックを軽減すること等が推奨されています。
また、地域のコミュニティに積極的に参加して現地でのつながりを作ることも、精神的健康の維持に役立ちます。
3-3. 現地で利用できるサポート機関とサービス
駐在員や出張者が利用できるサポート機関として現地の大使館や領事館が挙げられます。
多くの大使館や領事館では日本人のためのカウンセリングサービスや相談窓口を設置しています。
また、現地の大学や企業でも専用の相談窓口を提供している場合が多く、やむを得ない問題に対するサポートを受けることができます。
ただし、大使館や企業の相談窓口は営業時間が限られている場合が多く、対応内容も一般的な相談にとどまることがあります。
そのため、緊急時や専門的なメンタルヘルスサポートが必要な場合には十分な支援が受けられない可能性があります。
インターナショナルSOSでは世界各地のネットワークを活かし、会員企業様の海外出張者や駐在員、および帯同家族に向けた 24時間365日対応のメンタルヘルスサポート を提供しています。
異文化適応やストレスマネジメントに関する相談もおこなえます。
日本語をはじめとする60ヶ国語での対応が可能で、相談者が希望する言語のネイティブスピーカーが対応しています。
また、管理者や人事担当者向けに、回数無制限での電話相談も提供しており、いつでも迅速なサポートを受けることができます。
4. リモートワーク時代のメンタルヘルス課題
コロナ禍をきっかけにリモートワークが定着し、柔軟な働き方が可能になった一方で、メンタルヘルスへの影響が懸念されています。
ここからはリモートワークがもたらすストレス要因とその対策について解説します。
4-1. リモートワークがもたらすストレス要因
主なメンタルヘルスの課題は、対面での交流が減ったことによる孤独感や疎外感、時間管理の難しさ、連絡過多による疲れなどが挙げられます。
リモートワークの普及によって職場と家庭の境が曖昧になり、オンとオフをうまく切り替えられないことが仕事とプライベートの境界を曖昧にし、精神的ストレスを招く要因となっています。
4-2.リモート環境におけるメンタルヘルス対策と外部支援の活用
企業ではオンライン上でのコミュニケーション機会を増やしたり、ウェルビーイングを意識した働き方を促進したりする取り組みがおこなわれています。
しかし、これだけでは個々の従業員のメンタルヘルス課題を十分にカバーできない場合もあります。
インターナショナルSOSではリモートワーク環境におけるメンタルヘルス支援を提供しており、心理カウンセリングやマネージャー向けのメンタルヘルスウェビナーを通じて、企業のメンタルヘルス対策を強化します。
実際にジャカルタやシンガポールでもメンタルヘルス支援の一環としてインターナショナルSOSのサービスが活用されています。
詳しい内容は こちらの記事 をご覧ください。
5. 企業が取るべきメンタルヘルス対策とは
現代のグローバルなビジネス環境において従業員のメンタルヘルスは企業の生産性や持続可能性に直結しています。
最後の章では改めてメンタルヘルスケアの制度を設ける重要性をご説明し、企業が取り組むべき具体的なメンタルヘルス対策について重要なポイントを解説します。
5-1. 海外駐在員・リモートワーカー向けのメンタルヘルスケア制度の重要性
海外駐在員や出張者、リモートワーカーは物理的な距離や文化の違い、社会的孤立などによってメンタルヘルスのリスクにさらされています。
企業は従業員の精神的健康を守るために、カスタマイズされたメンタルヘルス支援を検討すべきです。
例えば、海外駐在員や出張者、リモートワーカー向けに現地の文化や環境に適応するためのストレス管理プログラムを提供することが重要です。
インターナショナルSOSの エモーショナルサポート のような企業向けのメンタルヘルスサポートを通じて、24時間365日対応のカウンセリングや異文化適応の支援を提供することが重要です。
インターナショナルSOSでは海外駐在員のストレスや医療の不安によって事業継続が困難になるリスクを避けるため、お客様に合わせた全体的なメンタルヘルスとウェルビーイングのプログラムを開発する支援をおこなっています。
5-2. メンタルヘルス対策の導入時のポイント
企業が海外駐在員やリモートワーカーのメンタルヘルスを支援する際には、以下のポイントが重要です。
- カスタマイズされたサポートの提供
従業員の勤務形態や勤務地に応じて、個別のニーズに対応したメンタルヘルス支援をおこなうことが求められます。例えば、異文化適応のためのトレーニングや現地の言語でのカウンセリングサービスなどが効果的です。 - 24時間対応のサポート体制
時差や緊急時に備え、24時間365日利用可能なメンタルヘルスサポートを導入することで従業員はいつでも安心して相談ができます。 - オンラインカウンセリングの活用
リモートワーカーや海外駐在員がアクセスしやすいオンラインのカウンセリングやサポートを提供することで、地理的制約を超えた支援が可能です。
インターナショナルSOSは世界中の企業のメンタルヘルス支援をおこない、従業員の心の健康を守るためのプログラム を提供しています。
企業向けにはストレスチェック、カウンセリング、トレーニングなど多岐にわたるサポートが可能です。
日頃、健康・安全管理に関わる業務以外にも携わっている労務・人事の方々は言うまでもなく、メンタルヘルスを専門に担当している方であっても、限られたリソースの中で今までお伝えした対策を準備するのは非常に難しいと感じられると思います。
そのため、まずはメンタルヘルス対策の全体像と自社の現状、対策コストの把握だけでもいいので、一度専門家に相談してみることが最もおすすめです。
インターナショナルSOSは約40年間メンタルヘルス・ヘルスケアに関するサービスを国外へ出張・駐在する皆さまにご提供しており、この分野の草分け的存在の企業です。
世界90カ国以上、1,200カ所以上の拠点で活動しており、政府、公的機関、民間企業、NGOなど幅広い組織の方々をご支援しています。
海外駐在員・出張者のメンタルヘルス対策に不安はありませんか?
インターナショナルSOSでは、企業のご担当者様のご相談を受け付けています。
- 海外駐在員・出張者のメンタルサポートの具体的な方法は?
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