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海外出張者・海外赴任者・駐在員のメンタルヘルスケア|企業が取るべき対策とは?

メンタルヘルスに悩む海外出張中の男性
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ソーシャルディスタンスを保つことを求められたコロナ禍を経て、「メンタルヘルス」というキーワードはより注目されるようになりました。現在も国内のリモートワーカーに限らず、母国を離れて海外で働く従業員にとって、適切なメンタルヘルスケアは重要な課題です。

そこで、インターナショナルSOS所属の湯井医師(メディカルディレクター)監修のもと、海外勤務者が直面するメンタルヘルスの課題と現状や、日本からの海外出張・赴任・駐在・派遣が多い国で利用可能なメンタルヘルスケアサービス、企業のメンタルヘルスケア対策、専門家によるメンタルヘルスケアの支援事例、企業・団体がメンタルヘルスケア体制を構築する際の注意点をご紹介します。

海外出張者/海外赴任者/海外駐在員/海外派遣員と帯同家族が直面するメンタルヘルスの重要性と課題とは?

メンタルヘルスのカウンセリング風景

言語、生活習慣、社会システム、気候、衛生環境、医療などの違いによるストレスが、海外で働く従業員本人や同伴する家族のメンタルに支障をきたすことは決して珍しくありません。この章では、メンタルヘルスの重要性と、海外勤務者と家族が直面しやすいメンタルヘルスの課題について見ていきます。

海外でメンタルヘルスの重要性が高まる背景

OECD(経済協力開発機構)の報告書「Mental Health Promotion and Prevention」によると、OECD加盟国(日本を含む)と欧州27カ国の5人に1人が軽~中程度のうつ鬱状態にあり、多くが診断や治療を受けておらず深刻化する可能性がある、と指摘されています。

インターナショナルSOSが発行する「リスクアウトルックレポート2026」によると、グローバルリーダーが事業への深刻な影響を懸念する最重要課題トップ10のうち、7位(17%)にメンタルヘルスリスクが挙げられています。

日本に絞っても、文部科学省が作成した「在外教育施設派遣教員安全対策資料【健康安全・感染症対策編(改訂版)】」の「第4章海外でのメンタルヘルス」によると、海外で働く従業員の帰国理由のうち、交通事故に次ぎ2番目に多いのがメンタルヘルス上の問題と言われています。

海外でメンタルヘルス不調につながる主な原因

海外赴任や駐在員の場合、本人や同伴する家族が以下のような要因でメンタル不調に陥ることがあります。

  • 言語、文化(働き方、生活環境、食など)の違い
  • 現地従業員とのコミュニケーションギャップ(解釈のずれ)
  • 業務の重圧
  • 現地でのコミュニティの欠如(友人、知人が居ない)による孤独
  • 子どもの学校問題(言語、教育の質、入学待機、いじめなど)
  • 帯同家族のキャリアの中断による喪失感

従業員本人が抱える、言語も文化も異なるメンバーを抱えて拠点を管理しなければならない重圧や、それによる過剰労働、職場での孤独感などに加え、帯同家族が抱える孤独感や、学校への不適応などの課題が、家族全員のメンタルヘルス不調へと発展するリスクがあります。

海外勤務者・帯同家族が抱えやすいメンタルヘルスの課題

当社の40年以上にわたる支援実績データによると、サポートを必要とするメンタルヘルス症状の中で最も多いのは「不安」と「ストレス」です。これらが引き金となり、適応障害やうつ病、バーンアウトといった代表的なメンタルヘルス不調に陥ることがあります。

環境要因によって短~中期的に起こる適応障害に対し、脳内の伝達物質の不調が慢性化することで、長期的な意欲の低下や気分の落ち込みなどが見られる場合、うつ病の可能性があります。適応障害はストレス源から離れることで改善が見込めますが、うつ病やバーンアウト状態に陥ると、休養だけでなく医学的な治療を必要とします。

近年、地政学的緊張によりセキュリティリスクが高まる中、生命を脅かされるような事故や事件に遭遇することで、PTSD(外傷後ストレス障害)に悩まされる場合もあります。いずれのメンタルヘルス不調に対しても、事前に海外赴任中のメンタルヘルスの重要性と不調への早期対応について啓蒙しておくこと、赴任中のメンタルヘルスチェックやカウンセリング、回復までのモニタリングと支援が重要となります。

海外のメンタルヘルス対策と企業の取り組み

病院で受診をする女性と医師

この章では、日本からの海外出張や駐在が多い国における国や自治体のメンタルヘルスケア制度と、企業が取り組むべきメンタルヘルスケアについて扱います。

海外政府・自治体の支援制度

日本からの出張者・駐在員の多い5カ国(アメリカ、オーストラリア、カナダ、中国、タイ)のいずれにおいても、現地政府によるメンタルヘルス支援は自国民や永住者を主な対象としており、外国人である出張者・駐在員への支援は限定的です。

アメリカ、オーストラリア、カナダはメンタルヘルスケアが社会に浸透していますが、公的保険の対象外である外国人が民間のカウンセリングを受診すると高額な費用が発生します。一方で、中国やタイでは公的支援窓口が存在するものの現地語のみの対応がほとんどで、医療の質を担保するには、外国人向けや私立病院で高額なカウンセリングを受診する必要があります。

日本の外務省も、現地の医療事情に精通した医務官を在外公館に配置しています。しかし医務官は外交官の身分であり、現地での医療行為が認められていないため助言に留まり、また専門が必ずしも精神科とは限りません。さらに、医務官が配置されていない国もあり、任期の関係で継続して同じ医務官からの支援を受けられない可能性もあります。

企業が取り組むべきメンタルヘルス施策

海外勤務者のメンタルヘルスを守るためには、企業が「予防」「早期発見」「早期支援」の仕組みを整えることが重要です。具体的には以下のような取り組みが挙げられます。

  • 海外赴任前後のメンタルヘルス研修
  • 24時間相談できるメンタルヘルス相談窓口の確保
  • 治療が必要な際に医療専門家から迅速なサポートが受けられる体制の整備

研修では、文化ストレスや孤立感、不安を感じたときの対処法や、現地の医療体制への理解を深めてもらうことで、メンタル不調の予防と迅速な対応につながります。早い段階で相談できる仕組みがあると、不調の悪化や長期化を防ぐことができるため、24時間利用できる相談窓口や、医療機関を紹介してもらえる連絡先を事前に伝えておくことも大切です。

緊急時の対応を事前に把握しておくことで、海外勤務者と帯同家族が安心して生活できる環境づくりにつながります。

インターナショナルSOSによるメンタルヘルス関連の支援事例

サポートをするインターナショナルSOS職員たち

この章では、海外で想定されるメンタルヘルスリスクを理解するために、実際に寄せられた相談をもとに3つのケースをご紹介します。(本事例に含まれる国名、症状、個人属性等の情報は、プライバシー保護の観点から、特定の個人が同定されないよう変更しています。)

事例1:海外研修中のメンタルヘルス不調を支援

対象:20代・男性・専門職・カンボジア

カンボジアの辺境地域で、3カ月の海外研修に初めて参加したAさん。過酷な衛生環境、厳しい行動制限、そして上司や職場の人と24時間顔を合わせる環境による精神的ストレスから、頭が重い感覚や腹痛を頻繁に発症しました。そこでAさんは、インターナショナルSOSに電話で相談をしました。

医療専門家チームがAさんに内科受診を手配し、身体的異常がないことを確認しました。その後、日本人臨床心理士による遠隔カウンセリングを実施し、原因が大きな精神的ストレスにあることを特定しました。

当初は勤務先への報告を拒んでいたAさんですが、医療チームが密に連絡を取り続け信頼関係を築いたことで、2週間後に会社への相談を決意。三者協議の末に早期帰国を選択し、十分な療養を経て無事に職務復帰を果たされました。

事例2:駐在員の帯同家族のメンタルヘルス不調を支援

対象:50代・女性・欧州駐在者帯同家族

日系金融機関の現地責任者の帯同家族として、欧州の大都市で暮らし始めたBさん。言語や文化の壁に加え、現地日本人コミュニティ特有の濃密な人間関係に強いストレスを感じていました。多忙な夫にも理解されず、精神的に追い詰められていたある日、激しい胃痛と動悸に襲われ、インターナショナルSOSに相談をしました。

医療専門家チームが症状と背景を聞き取り、すぐに現地での内科受診と日本人臨床心理士との遠隔心理カウンセリングを調整しました。内科診察では胃や心臓に異常が無いことが確認され、カウンセリングではBさんと対話を重ねるとともに、認知行動療法の手法を取り入れて回復へ導きました 。

事例3:メンタル不調による狭心症と医療者付き添いの帰国を支援

対象:50代・男性・管理職・豪州赴任者

3年の駐在任期終了を間近に控えていたCさん。多忙な日々を送っていたある日、胸に違和感を感じ、インターナショナルSOSに相談をしました。医療専門家チームが話を伺うと、Cさんは以前の健康診断で血圧やコレステロール値がやや高めで、パニック発作が続いて内服治療を受けていたことが判明しました。速やかに現地循環器科受診を手配したところ、心臓カテーテル検査で「狭心症」と診断され、直ちに治療を実施しました。

術後の経過は良好でしたが、Cさんは「フライト中に発作が起きるのではないか」という強い不安を抱えていました。そこで当社医療専門家チームは、現地主治医と連携し抗不安薬の処方を調整しました。さらに本人や勤務先の産業医と協議を重ね、当社の医療者がフライトに同行する体制を整備することで、Cさんが安心して帰国することを実現しました。

企業・団体が海外でメンタルヘルス対策を行う際の注意点

電話をかけている入院中の男性

最後に、海外で働く従業員のメンタルヘルス対策で企業が注意すべき3つのポイントをご紹介します。

リモートワークがもたらすメンタルヘルス不調

長期滞在者に限らず、短期滞在でリモートワークをする海外出張者へのメンタルヘルスケアも重要です。対面での交流が減ることによる孤独感や疎外感、時差による時間管理の難しさや連絡過多がストレスやメンタル不調につながります。

例えば海外駐在員が一人離職・帰任することに伴う損失(代替者の選定・渡航費・教育費等)は、場合によっては数千万円にのぼることもあるため、心身の健康への配慮を怠ることは経営上の大きな損失にも直結します。

企業ブランド・海外事業のレピュテーションリスク

組織が海外出張者・駐在員に適切なメンタルヘルスケアや健康診断を怠った状態で健康被害が発生し、精神障害などの労災認定を受けた場合、労働基準監督署から是正勧告を受けます。また、是正に従わない場合は、厚生労働省によって社名が公表されます。

メンタルヘルスケアを適切に行わないことで、従業員の健康が害されるだけでなく、企業やブランドのレピュテーション(評価、信頼)もリスクにさらされ、採用や取引に甚大な悪影響が及びます。

海外勤務者のメンタルヘルス対策と安全配慮義務

海外拠点で6カ月以上働く従業員に対して、渡航前と渡航後の健康診断と最低年1回の定期健康診断を実施し、結果を労働基準監督署に報告することが企業の「安全配慮義務」として法律で定められています。

違反すると、50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条)が科される他、従業員が亡くなった場合、数千万円~1億円を超える損害賠償を命じられる可能性があります。加えて、上記の定期健康診断の実施頻度はあくまで最低基準のため、年1回を守っていても、労働環境によっては安全配慮義務違反とみなされます

CTA:海外勤務者のメンタルヘルス支援ならインターナショナルSOSへ

創業40年のインターナショナルSOSは、世界中で働く従業員の皆さまに以下のようなメンタルヘルス支援を行っています。

  • 従業員・管理者対象の赴任前メンタルヘルスセミナーの開催
  • 24時間365日対応の医療相談
  • 海外から母国語で相談できる(多言語対応)オンラインのメンタルカウンセリング
  • 現地での適切な医療機関の選定や受診手配
  • 第3国への医療搬送や帰国搬送の実施(帰国便や同伴する医療者の手配、日本での受け入れ医療機関の調整など)

世界90カ国、1,200カ所以上の拠点とグローバルネットワークにより、政府、公的機関、民間企業、NGOなど幅広い組織の支援実績と豊富な経験を誇ります。

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