Skip to content
Subscriber Assistance+1 215 942 8226
会員ログイン
Language123
Select

海外で働く従業員の安全を守るには?よくある被害と企業が取り組むべきセキュリティ対策

海外セキュリティ対策の会議の様子
Ribbon

海外出張者や駐在員を抱える企業・団体にとって、従業員の安全確保や危機管理体制の構築は大きな課題です。特に近年は、山火事や地震などの自然災害や、紛争、テロ、サイバー攻撃など、国や地域によってもさまざまなセキュリティ課題への対策をおこなわねばなりません。

そこで、セキュリティ専門家であるインターナショナルSOSが、昨今海外で起きているリスクの傾向を解説し、企業・団体が行うべき具体的な対策をわかりやすく紹介します。

近年の海外渡航者の被害現状

空港で待つ海外出張者

2020〜2021年は新型コロナウイルスの影響で海外渡航者が大幅に減少し、感染対策の緩和などにより、2022年以降は渡航者数が再び増加しました。

外務省によると、2024年の海外邦人援護件数は11,864件で、地域別ではアジアが最も多く、次いで欧州が続きます。件数自体は2021年以降減少傾向にあるものの、海外出張者・駐在員を守るために、適切なセキュリティリスク対策が重要であることには変わりません(外務省「2024年(令和6年)海外邦人援護統計」)。

企業が想定すべき海外でのセキュリティ被害

セキュリティアナリスト

続いて、海外で働く従業員が直面する具体的なセキュリティリスクについて、詳細を見ていきましょう。

犯罪

外務省「2024年(令和6年)海外邦人援護統計」によると、2024年は10,287名が在外公館から援護を受け、そのうち約20%が窃盗や強盗による被害でした。

窃盗・強盗

海外邦人援護のなかでも、全世界の合計件数を見ると、窃盗や強盗、遺失・拾得物(物を紛失し、窃盗の確証がない場合も含む)の被害が特に多くなっています。

例えば、ホテルでチェックイン中に足元へ置いたカバンを置き引きされたり、混み合った公共交通機関で財布をすられてしまう事件が発生しています。

強盗被害では、人通りが少ない路地で銃を突き付けられ金品を奪われる、親切そうに見せかけた相手から突然凶器を突きつけられる、暴行を受けて荷物を強奪されるなど、深刻な事件も起きています。

国や地域によって手口はさまざまですが、観光客・外国人は標的になりやすいため、従業員教育や行動指針の徹底が欠かせません。

誘拐・不当拘束

治安が悪化している地域では、外国人を狙った組織的な誘拐や不当拘束が発生しています。

外務省「海外における脅迫・誘拐対策Q&A」にも記載があるように、誘拐には裕福な家族の一員や資金のある企業の従業員を誘拐する営利目的のものと、政府関係者、国を代表するような大企業、経済開発プロジェクトの関係者などを誘拐する政治目的のものがあります。

誘拐の対象は本人の場合もあれば、資金調達をする者を避け、配偶者や子供が狙われることもあります。そのため、従業員本人だけでなく、帯同家族も含めた対策を取ることが重要です。

また、同じ身体的な拘束という点で、不当拘束のリスクも見過ごせません。取引先や従業員の自由を不当に制限し、労働を強要した場合、現地の法律に抵触するだけでなく、ブランド毀損につながる可能性があるため注意が必要です。

政情不安

世界におけるテロの発生状況を分析している「Global Terrorism Index2025」によると、テロの発生件数及び死者数は、特定地域における一時的な数値の減少や突発的な事件を除くと、例年と同等か増加傾向にあります。

外務省の安全ホームページでも、祝祭日やイベントシーズンなど、人が集まる時期にテロが起きやすいことの注意喚起がされています。近年では、中東情勢を背景にイスラエル権益・ユダヤ人を標的としたテロも発生しています。

また、レストラン、公共交通機関、観光施設、デパートといった、警備が手薄になりやすく一般市民が集まりやすい場所(ソフトターゲット)を狙ったテロも起きています。

特に、経済平和研究所(IEP)が運営するVision of Humanityによると、直近の10年間、組織の後ろ盾を持たない個人による「ローンウルフ型テロ」が、特にヨーロッパで増加しています。

自然災害

国連防災機関(UNDRR)が発行する「世界防災白書(Global Assessment Report on Disaster Risk Reduction)2025年」によると、間接的な影響や生態系への影響を含めた自然災害による総損失額は、年間で2.3兆ドルを超えているとされています。

気候変動の影響による保険料の上昇や、それによって加入者が減り、保険会社が地域から撤退する事例も報告されています。

海外展開をしている企業・団体は、こうしたリスク移転も考慮に入れた事前の自然災害へのリスク対策が求められています。

また、災害時には道路・通信・電力などのインフラが止まり、海外出張者・駐在員、現地スタッフが自力で安全を確保することや医療にアクセスすることが難しくなります。

これらに対応するために、緊急時の避難や国外退避、医療搬送の知見が豊富な専門家に事前に相談することも重要です。

健康リスク

海外出張者・海外赴任者・駐在員は、犯罪や災害といったセキュリティリスク以外にも、健康リスクに気を付ける必要があります。

渡航先でパンデミックが発生すると感染症にかかる危険が高まるうえ、現地医療水準が低い場合は適切な治療を受けられない懸念があります。

また、文化や生活環境の違い、孤独感、ストレスなどが原因でメンタルヘルスを崩すケースも多く見られます。こうした健康面の問題は業務遂行能力にも影響するため、企業は身体面・精神面を含めた健康対策を講じる必要があります。

従業員本人に限らず、帯同家族(配偶者、子ども)のメンタルヘルスが従業員本人に影響を与えることもあるため、帯同家族を含む包括的なケアを準備することが望まれます。

海外で働く従業員を守るための3つの視点

インターナショナルクリニックの医者と患者

海外で従業員の安全を守るために重要な視点として、「安全配慮義務」「人的資本経営・ウェルビーイング」「予防とアシスタンス」の3点が挙げられます。

安全配慮義務

「安全配慮義務(Duty of Care)」という名称の単体の法律があるわけではありません。

従業員の健康と安全を事業主(企業・団体)が配慮しなければならない、と定めた法律(主に労働基準法労働契約法労働安全衛生法)やルールの総称を「安全配慮義務」と呼んでいます。

安全配慮義務の対象は、企業や団体が雇用する、国内外で働くすべての雇用形態の労働者であることに注意が必要です。

つまり、海外に出張・赴任・駐在している従業員も、安全配慮義務の対象です。海外でも必要なときに適切な治療や支援が受けられる体制づくりができていない場合、企業・団体は刑事罰または損害賠償が求められる可能性があります。

安全配慮義務の詳細は、当社の記事「安全配慮義務とは?判例や具体例、違反の罰則、対応策の解説と手引き」をご覧ください。

人的資本経営とウェルビーイング

「人的資本経営」は、従業員のスキルや経験を企業の重要な資本として捉え、その価値を最大限に発揮できる状態を整えることで、中長期的な企業価値の向上を目指す経営のあり方です。

そのためには従業員が心身ともに健康で、安心して働ける「ウェルビーイング」の実現が欠かせません。海外では犯罪・災害・感染症などのリスクが高く、従業員の安全が損なわれる可能性があります。

目の届きやすい国内で働く従業員だけでなく、海外で働く従業員の健康と安全を守る体制を整えることは、持続可能な事業成長のための重要な投資といえます。

予防とアシスタンス

海外で従業員の安全を確保するには、危険を事前に把握して「予防」し、実際にリスクが発生した際に専門家の「アシスタンス」を受けてリスクに対応し、早期の回復を図ることが大切です。

予防には、信頼のおける情報源からの情報収集と適切なリスク分析が欠かせません。そしてリスク対応には、現地の医療事情や治安情報、医療の質の確認が取れている医療機関情報の把握から、国外退避や医療搬送の手配まで、幅広い知識とネットワークが必要になります。

そのため、長年世界各地での医療・セキュリティアシスタンスの実施経験があり、リスク対応のための強固なグローバルネットワークを持つアシスタンスの専門家に相談することもおすすめです。

企業によるセキュリティ対策の具体例

セキュリティのEラーニングを操作する様子

先述した通り、企業・団体は従業員の安全確保のために、情報収集、教育、健康管理、アシスタンス体制の整備など、多面的な対策を行う必要があります。以下でその具体的な内容を紹介します。

渡航先のリスクに関する情報の収集

海外出張者・海外赴任者・駐在員の健康と安全を守るためには、企業・団体が渡航先の医療・セキュリティ情報を事前に収集し、現地の医療機関や治安を把握しておくことが重要です。

治安情勢、犯罪件数や手口、感染症や医療体制、風俗・習慣などを確認し、過去の災害履歴や潜在的なリスクも踏まえて計画を立てる必要があります。

また、偽情報が蔓延している現在、信頼のおける情報源であるかの判断が重要になります。医療機関についても、国や地域によって格差が大きく、また施設単位でも医療設備や医療の質に差があります。

これらを念頭に置いて、信頼のおける情報源から情報収集する必要があります。

安全研修・事前教育の実施

海外での事故や事件、災害に備えるには、従業員自身がリスクを理解し、適切に行動できるよう教育することが不可欠です。

渡航前研修を実施し、従業員に渡航リスクや緊急時の行動指針などを共有し、自分の身を守る意識と行動力を養うことも大切です。

例えばスマートフォンなどの電子機器は、海外では盗難対象になりやすいため、ホテルや公共交通機関、飲食店などあらゆる場面で目を離さないよう指導することが重要です。

事前教育が徹底されていれば、予期せぬ事態でも落ち着いて適切に対応でき、被害の最小化につながります。インターナショナルSOSは、渡航前後の従業員教育にお役立ていただけるオリジナルの学習コンテンツ「デジタル ラーニング ポートフォリオ」をご提供しています。

健康管理体制の整備

渡航前の健康診断やワクチン接種など、海外出張者・駐在員の健康管理体制は、企業の安全配慮義務の一環であり、非常に重要です。渡航前に限らず、渡航後に継続して健康的に業務遂行を行えるよう、定期健康診断やワクチンの追加接種の他、メンタルヘルス対策を実施することが重要です。

特にメンタルヘルスに関しては、文部科学省の資料「海外でのメンタルヘルス」でも言及されているように、文化の違いによるストレスが心身に不調をきたす例が珍しくありません。

そのため、手軽に利用できるオンラインカウンセリング窓口の設置・案内と、定期的なカウンセリングを実施することが望ましいです。日常的に海外で働く従業員の心身の健康を確認することで、緊急時にも迅速な対応が可能になるため、企業リスクの軽減にも大きく寄与します。

緊急時のアシスタンス体制の整備

突発的な犯罪、事故、災害などが発生した際、従業員を迅速に支援できるようアシスタンス体制が必要です。以下に重要なポイントを示します。

迅速なアラート通知

海外では、気候や政治・経済状況によって突発的な治安悪化や災害が発生することがあり、海外で働く従業員が巻き込まれるリスクがあります。

こうしたリスクに備えるために、企業・団体は安否確認システムなどを活用して、国内にいる管理者と海外にいる従業員の双方に対して、現地の危険情報や緊急事態を通知できる仕組みを整えておくことが重要です。

これにより、管理者は状況に応じた外出自粛や自宅待機の指示、あるいは迅速な緊急支援の手配ができ、従業員は最新情報をもとに、周囲の安全確認や危険地域の回避、さらには国外退避の準備を段階的に進めることができます。

24時間の緊急連絡窓口

海外では、時差の関係で日本時間の夜間や休日に、海外で働く従業員がトラブルに巻き込まれることも少なくありません。

特に1分1秒が従業員の生死に関わる医療・セキュリティ上のトラブルのために、24時間対応の緊急連絡窓口を準備しておくことが不可欠です。

犯罪・事故・急病などの緊急事案が発生した際、従業員がすぐに相談できる体制があれば、迅速に適切なサポートを受けることができます。迅速な連絡体制は、被害拡大の防止にもつながるため、安全管理の要として体制を整えておくことが大切です。

医療搬送や緊急退避の手配

従業員が重病や重傷を負った場合や、暴動・テロなどに巻き込まれた場合、現地の医療機関だけでは対応が難しいことがあります。このような場合に備えて、緊急医療搬送や緊急退避(国内・国外)を手配できる体制を整えておくことが不可欠です。

国によっては、紛争エリアなどの治安の悪いルートを避ける必要もあるため、自力で手配するのは極めて困難です。各国各地域の医療・セキュリティ事情に精通した専門家の支援を受けることが、結果的に大きな損失を回避することにつながります。

国外搬送のためのチャーター機

海外で働く従業員の健康と安全を守るためには、従業員の渡航前に限らず、渡航後も見据えた体制構築が重要です。

人的リソースが限られる中、情報収集、従業員教育、緊急時対応といった広範かつ重要な業務を万全に行うために、専門家の手を借りるのも一つの手段です。

インターナショナルSOSは、40年以上世界中の企業・団体に、医療・セキュリティに関する専門的な支援を提供しています。海外のセキュリティ対策に関するご相談は、こちらからお問い合わせください