SkipToContent
HeaderPhoneNumberLabel+1 215 942 8226
会員ログイン
LanguageSelector
SelectLabel

トピックス

【セミナーレポート】TICAD9で開催したアフリカの医療・セキュリティに関するセミナー内容をご紹介

Ribbon

先日2025年8月20日~22日、インテックス横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)に、企業・団体の医療・セキュリティ支援の専門家としてインターナショナルSOSは、「アフリカ進出時に注意すべき医療と安全保障における渡航リスク管理」と題したセミナーに登壇。当社の医療とセキュリティの専門家3名が、アフリカ進出を検討中、もしくは既に進出されている企業・団体の経営企画、人事・労務、リスク管理担当者様向けに有益なお話しをお届けしました。

ここでは、本セミナーの内容を要約してご紹介いたします。
企業・団体のアフリカ進出時の医療と安全についてインターナショナルSOSの専門家にご相談されたい方は、こちらからお問い合わせください

1.アフリカにおける医療リスク・健康リスクについて

本セミナーは、アフリカでのインターナショナルSOSの医療・セキュリティ支援サービスの概要と、アフリカの医療リスクの話、セキュリティリスクの話、医療・セキュリティの専門家3名によるパネルディスカッションの4部構成で行われました。

1-1.アフリカの医療と自営クリニック

ゼネラルマネージャー 丸山美鈴

セミナーの冒頭挨拶では、創業40周年を迎えたインターナショナルSOSが、アフリカで30年以上にわたり企業・団体に提供してきた医療・セキュリティ支援について、ゼネラルマネージャーの丸山美鈴が概要をお伝えしました。

アフリカでのインターナショナルSOSの医療・セキュリティ支援サービスの概要

現在、インターナショナルSOSはアフリカに160カ所の医療拠点と15カ所の自営クリニック、3カ所の24時間365日対応のアシスタンスセンター、2カ所の地域セキュリティ管理センターを展開しており、900名の医療専門家、4,000名の医療プロバイダー、160名のセキュリティ専門家が、出張者・駐在員、現地従業員の健康と安全を支えています。

1-2.「多様な」アフリカの医療体制とは?

インターナショナルSOS所属 医師・カラボ・モンガエ博士

挨拶の後、アフリカの医療事情について、南アフリカ出身でインターナショナルSOS所属の医師・カラボ・モンガエ博士が話をしました。

はじめに「アフリカの医療体制は、その地理と同様に非常に多様」である、と指摘しました。

医療設備や医療の質、アクセスはアフリカ大陸の国家間の差があるだけでなく、都市/農村部、紛争後の地域など、地域間の大きな差も存在しています。

医療従事者の人材不足も深刻で、同じ問題を抱える日本が人口1万人あたり26名の医師がいるのに対し、アフリカの中でも比較的高度な医療システムが整備されている南アフリカでさえ、人口1万人あたり9名の医師しかいないような状況です。

セキュリティリスクとの関連性で言うと、セキュリティリスクが高い地域は、医療リスクも中~高程度と高く、また医療搬送が必要になる可能性が高い地域とも重なります。

このような状況から、「従業員の健康を支援する強固な体制を企業・団体が自ら構築することが重要」であると伝えました。

1-3.アフリカ進出企業・団体が注意したい医療・健康問題

注意すべき健康問題について話す様子

話はアフリカ進出企業・団体が注意すべき健康問題に移り、その一例として、感染症/非感染疾患を挙げました。

「感染症については、アフリカ各地でマラリアや結核が未だに常在しています。過去10年間を見ても、エボラ、ラッサ熱、マールブルグ病といった致死率の高い病気が繰り返し発生している。」と述べ、「近年では、フェイクニュースやそれに伴うワクチン忌避から、かつて流行した感染症の再流行も報じられています。」と、特に最近見られる傾向についても言及しました。

また糖尿病や不安症、うつ病、燃え尽き症候群といった非感染性疾患やメンタルヘルスの問題については、「駐在員だけでなく、都市部で働く現地従業員にも起きやすい健康問題」として、注意を喚起しました。

一方で、予防医療や、対応計画の策定と現地病院との提携、緊急時のシミュレーション訓練といった予防策を講じていた企業は、感染症による危機が生じた際もスムーズに対処できた点も強調しました。

1-4.アフリカの医療・健康リスクに対する解決策

事業継続計画(BCP)の問題に取り組む様子

モンガエ博士は、「従業員の健康を個人の問題としてではなく、労働力のレジリエンス(強靭性)、引いては事業継続(BCP)の問題として捉え、医療・健康リスクの予防策を事業運営の一部として組み込むことが重要」だと主張します。

「企業・団体が健康診断、ワクチン接種、健康教育、多言語でのメンタルヘルス支援やカウンセリングを提供することで、従業員の欠勤率の低下や労働者間のコミュニケーションの促進、また医療搬送費の削減にもつながった実例もある」と続けました。

最後に、「アフリカは“高リスク”の環境ではなく、“高変動”の環境」と述べ、「企業・団体の成長戦略に健康対策を組み込み、適切なシステム構築と人材育成、心構えをすれば、従業員の健康を守りながら成果を出すことができる。」と締めくくりました。

2.アフリカにおけるセキュリティリスクについて

続くケニア出身でインターナショナルSOS所属のセキュリティディレクターのアダム・ラッカーニは、アフリカで注目したい3つのセキュリティリスクと、リスク軽減戦略について話をしました。

2-1.アフリカ進出企業・団体が注目したい3つのセキュリティリスク

インターナショナルSOS所属 セキュリティディレクター アダム・ラッカーニ

まず今日のアフリカで特筆すべきセキュリティリスクとして、「交通安全」「汚職」「自然災害」の3つを挙げました。

最初に交通安全について、「世界的には交通事故による死亡率が減少しているものの、アフリカでは増加している」と述べ、これは「従業員を含む人命に関わる問題であり、輸送貨物を事故で損失しかねないサプライチェーンの問題にもなり得る」と指摘しました。

2つ目の汚職については、世界における国家の腐敗度ランキングを見せながら「4分位された最下位25%のうち半数がアフリカ大陸の国」と述べ、「事業運営のみならず従業員の人命と権利、排他性に関わるリスクである」と警鐘を鳴らしました。

3つ目の自然災害では、異常気象、洪水、干ばつ、砂漠化、熱波、火災、暴風など世界的に見られる現象が、従業員の移動や輸送、サプライチェーンに影響を及ぼす他、食料や水をめぐる争いにも発展する可能性を示唆しました。

2-2.セキュリティリスク軽減のための4つの対応策

4つの対応策について話す様子

これらのセキュリティリスクの軽減策として、以下4点を紹介しました。

  • インテリジェンス(情報収集・分析)への投資
  • 事業継続計画(BCP)の見直し
  • 信頼できる現地パートナーとの連携
  • 組織の強靭性(レジリエンス)の強化

インテリジェンス(情報収集・分析)への投資

事業の成功率を高めるには、セキュリティリスクに的確かつ迅速に対応することが不可欠です。そのためには、信頼性の高いインテリジェンス(情報収集・分析)に基づく意思決定が重要になります。

アフリカ各地のセキュリティや医療情報に精通した専門家のサポートに投資することで、出張のような戦術レベルから、業界への投資といった経営層レベルの判断まで、スピードと正確性のバランスが取れた情報をもとに意思決定を行うことができます。

事業継続計画(BCP)の見直し

事業継続(BCP)を見直すことで、危機管理体制の強化につながります。危機管理チームの対応体制や避難計画の現状を把握し、内容への理解を深めることで、実効性のある計画が構築できます。

また、起こり得るシナリオの想定(シナリオ・モデリング)や、従業員への危機対応訓練を行うことを通じて、実際の危機が発生した際に、現地従業員が自立して適切な判断や行動がとれるようになります。

起こり得るシナリオの想定(シナリオ・モデリング)

信頼できる現地パートナーとの連携

アフリカで事業展開をする企業・団体にとって、政治・経済・社会・技術・環境・法制度などをセキュリティの観点から一から学ぶには、時間も費用もかかります。

そのため、医療分野と同様に、セキュリティにおいても信頼できる現地パートナーとのネットワークを築くことが重要です。こうしたつながりがあれば、状況の変化の兆しを早期に察知し、事前に適切な意思決定を行うことが可能になります。

組織の強靭性(レジリエンス)の強化

アフリカは必ずしも危険な場所ではなく、予算面でも体制面でも予期せぬ変化に柔軟に対応することが鍵になります。

そのためにはまず「ミッション・コマンド」、つまり意思決定の分散化が重要です。本社はビジョン、目標、法的な枠組みを設定し、その中で現地オフィスが運営し、必要な成果を達成していきます。

さらに、リスク管理文化の醸成も欠かせません。リスク管理を最初から組織の仕組みに組み込み、リスク管理に取り組む従業員を評価・報酬する体制を整えることで、社内に自然とリスク管理の意識が浸透します。

これにより、柔軟な対応力や意思決定の分散化が促進され、変化に強い「強靭性」のある組織づくりにつながります。

2-3.受動的な危機対応から危機予防へシフトする重要性

インターナショナルSOSの革新的な支援モデルの紹介

最後に、治療ではなく予防に重点を置いたセキュリティ支援モデルについて、上記の図を用いて紹介しました。

左図を指して「従来のセキュリティ支援モデルは、保険型、つまり危機が起きてから受動的に対応をするため、時間の90%が危機対応に費やされています。」と述べ、

「インターナショナルSOSが推奨するモデルでは、予防に約8割の時間が費やされ、20%が軽微な事象の対応、残る4%が危機対応となっています。」と右図について説明しました。

ラッカーニは、「インテリジェンスへの積極的な投資と予防策の実施によって先手を打つことで、既存のリスクを大幅に減らすことができる」とし、また「防ぎきれない予測不能な事態への対応に集中することで、安全に事業成長を達成できる」と話を結びました。

3.アフリカの医療・セキュリティリスクの事例と対処法|パネルディスカッション

最後のパネルディスカッションでは、福間芳朗(リージョナル セキュリティ ディレクター ノースアジア)を交えて、3名の医療・セキュリティの専門家がアフリカにおける医療・セキュリティリスクの具体例とその対処法の実例を紹介しました。

パネルディスカッションの様子01

3-1.アフリカで起きた医療危機の事例

福間:早速ですが、現場で実際に起きた医療危機の原因と具体例をうかがえますか。

モンガエ博士:まず医療リスクが危機にまで発展してしまう最大の要因は、企業が従業員をアフリカ大陸に派遣する際に、十分な準備ができていないことです。

例えば、マラリア流行地域で成功している企業は、従業員に対してマラリアに関する教育を行い、症状の見分け方や対処方法を理解してもらうなど、予防に力を入れています。

一方で、準備が不十分だった場合の実例として、中央アフリカの国に従業員を派遣した企業の例があります。

その従業員は帰国後にマラリアを発症しましたが、本人はマラリアの症状について十分な知識がなく、マラリアが存在しないとされる国で受診したため、風邪と誤診されてしまいました。結果として適切な治療が受けられず、亡くなられてしまったのです。

これらの例からも、予防への投資は人命においても事業の成功においても非常に重要であると言えます。

3-2.アフリカのテロリスクについて

パネルディスカッションの様子02

福間:3つのリスクに含まれていなかった、テロについてはどうなのでしょうか。

ラッカーニ:アフリカでテロ攻撃に巻き込まれる可能性は、統計上低いですが、テロや武装勢力は大陸全体で増加し続けています。

ソマリアのアルシャバブは周辺諸国にも影響を及ぼし、サヘル地域全域でも武装化が進んでいます。テロや武装勢力の活動が見られる地域に進出する際は、都市部/辺境地に関係なく脆弱で、リスクマネジメントを事業運営に組み込む必要性があります。

3-3.現場対応力の強化で医療リスクを予防した事例

福間:医療リスクに対する現場対応力を引き上げるのに成功した事例を教えてください。

モンガエ博士:西アフリカで操業していたある企業では、事業拠点の近隣にある病院の、看護師を養成する取り組みに対して投資しました。これにより、病院の看護ケアの質が向上し、地域コミュニティとの関係も改善されました。

看護師養成への投資は、従業員を国外避難させるための費用よりもコストを抑えることができ、費用対効果の面でも成功した事例と言えます。

3-4.セキュリティリスク発生時に現場対応が成功した事例

予防が活かされた事例

福間:最後に私から、セキュリティに関する危機対応で、予防が活かされた事例をお話しします。チャドの首都ジャメナで、突如緊急事態宣言が発令され、ネットワークが遮断され従業員の安否確認が取れなくなる事態が発生したことがありました。

ある企業では、危機に対する予防策として、事前に隣国カメルーンのSIMカードを入手していたため、会社の屋上から、目の前に流れる川向かいのカメルーンのネットを拾い本社と連絡をつけることができました。

医療もセキュリティも、事前にさまざまな事態のシミュレーションと予防策を講じることが大事であると言えます。ご清聴ありがとうございました。

4.まとめ|アフリカの医療・セキュリティリスクはインテリジェンスに基づく予防が大切

インターナショナルSOSのメディカルチーム

多くの企業・団体は、従業員をアフリカに派遣する際、地理的な距離から、医療施設やセキュリティサービスについて、デスクトップ調査で済ませてしまいがちです。

しかしながら、アフリカの医療・セキュリティリスクに対して適切に対処するには、インテリジェンス(情報収集・分析)に基づく予防と対応が必要不可欠です。

インターナショナルSOSは、現地の医療施設を実際に訪問して設備と医療の質を確認しているため、危機時の適切な受診アドバイスを実現しています。また、現地および世界中のセキュリティパートナーとの強固なネットワークも強みの1つです。

アフリカ現地の医療・セキュリティ課題は専門家にご相談を

30年以上アフリカで医療・セキュリティ支援に従事してきたインターナショナルSOSは、以下のアフリカの拠点と、専門家を有しています。

  • 160の医療拠点と15の自営クリニック
  • 3カ所の24時間365時間対応のアシスタンスセンター
  • 2カ所の地域セキュリティ管理センター
  • 900名の医療専門家と160名のセキュリティ専門家が在籍
  • 4,000名の医療プロバイダーと、セキュリティプロバイダーとのグローバルネットワークを保有

アフリカで活動される皆様に、確かな安心と支援をお届けする体制を整えています。まずは、こちらからお気軽にご相談ください。

アフリカ各国の最新リスク状況が一覧できるリスクマップのダウンロードはこちらから。