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海外の医療事情|日本との違い・感染症対策・ワクチン接種・企業が行うべき備えを解説

看護師と入院中の患者

海外の医療事情は、海外出張者・赴任者・駐在員の体調や仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えます。企業・団体としては、渡航先の国や地域の医療情報を事前に伝え、予防接種や渡航前研修を提供し、医療アシスタンスサービスを活用するなどして健康管理体制を構築することが大切です。また、渡航者本人としては、本人と帯同家族の健康確認と、常備薬や英文診断書などの持参が欠かせません。

この記事では、インターナショナルSOS所属の医師・メディカルディレクター湯井真紀子監修のもと、日本と海外の医療事情の根本的な違いをはじめ、赴任者や帯同家族が直面しやすい健康リスクや、渡航前に必須となる感染症・ワクチン対策、海外で医療機関を受診する際の注意点、そして企業に求められる包括的な健康管理対策について解説します。

海外出張者・赴任者・駐在員向けの医療支援やリスク対策について検討されている企業の担当者の方は、こちらからお気軽にご相談ください

日本と海外の医療事情の違い

海外では、国や地域によって医療制度や受診方法、医療費の負担など、日本の医療とは大きく異なる場合があります。日本との違いが現れやすい代表的な例を以下の表にまとめました。

  日本 海外
医療費 保険適用あり 全額自己負担の場合もある
救急車 原則利用可能 公共救急車がない場合や、高額請求される場合がある
保険 国民皆保険 民間保険中心の国も多い
支払い 後払いが一般的 前払い保証金が必要な場合もある

海外の医療事情|日本の医療との違いと6つの課題

続いて、特に開発途上国での医療に対してよく挙げられる6つの課題についてご紹介します。

  1. 不十分な医療インフラ:医療設備や人材が不足しており、場合によっては近隣の国・地域に移動しなければ十分な治療が受けられない
  2. タイムリーかつ正確な情報取得が難しい:治療担当者が患者に、早期から診断・治療の内容や今後の見通しを説明し、患者が理解した上で治療を進めるという概念が希薄
  3. 医療機関の「見た目」が重視される傾向:医療機関の概観や設備の新しさが注目され、医療の人的資源等が伴わず実際の医療の質が伴っていない
  4. 商業主義的な現地医療機関(過剰な検査と入院):利益優先の運営により、不必要な検査や入院が行われる
  5. 現地における不十分な衛生対策:衛生管理水準が低く、院内感染のリスクが高い
  6. 文化、言葉、医療システムの違い:言語の壁により症状の説明や診断結果の理解が正確に行えない、治療薬から検査容器に至るまで医師の処方箋を持参して院外の薬局で購入し医師に手渡す

日本では国民皆保険制度により、保険適用による安価で手軽に医療を受けられますが、海外では医療制度や医療費、受診方法などが大きく異なります。

そのため、信頼できる現地の医療機関を事前に探しておくことや、現地独自の医療制度の違いを事前に伝えておくこと、企業・団体側が十分な補償内容を含んだ保険への加入などをサポートすることが重要です。

日常的なけがや病気から緊急対応まで24時間365日相談できるアシスタンスサービスをあらかじめ利用できるようにしておくと安心です。

海外赴任者・駐在員が直面しやすい4つの健康リスク

医師と会話する海外赴任者

海外での生活・労働環境の変化は、海外で働く従業員の心身に想像以上の負荷を与えます。この章では、海外で直面しやすい具体的な健康リスクを紹介します。

➀環境変化による疾病(気候・自然環境)

渡航先の気候や自然環境、衛生状態などの違いは、身体に以下のような影響を及ぼすことがあります。

熱帯地域における症例

高温多湿の環境では体温調整が難しくなり、脱水症状や熱中症のリスクが高まります。湿度が高いと皮膚が蒸れやすく、汗疹(あせも)や白癬症(水虫など)などの皮膚疾患にもかかりやすい傾向にあります。

  • 熱中症・脱水症:めまい、頭痛、吐き気、意識障害
  • 皮膚疾患(あせも・白癬症など):かゆみ、発疹、皮膚の炎症

乾燥した地域

乾燥した環境では気道粘膜が刺激されやすく、上気道炎やアレルギー性鼻炎などの呼吸器疾患が生じる場合があります。

  • 上気道炎:喉の痛み、咳、発熱
  • アレルギー性鼻炎:鼻水、くしゃみ、鼻づまり

大気汚染による症例

交通量の増加や工場からの排気、石炭燃焼などによる大気汚染は、特に南アジア(インド、バングラデシュ)や中国、中東地域などで度々報告されています。先進国でも、地球温暖化に起因した山火事により大気質が悪化し住民が避難を迫られた事例も散見されています(米国西海岸、スペイン)。大気汚染は世界規模の問題であり、これら以外の地域でも十分注意が必要です。

短期的には、目や気道の違和感や咳き込みなど、軽度の症状がほとんどですが、長期的に大気汚染に晒された場合に、肺がん、心筋梗塞、脳梗塞等を引き起こす原因となる可能性が懸念されています(インターナショナルSOSジャパン 湯井真紀子らの論文「中国大気汚染事例における医療アドバイス提供の課題」参照)。

大気汚染によって起こり得る健康への影響の代表例は以下の通りです。

  • 目や鼻腔内の違和感や痛み
  • 気道への炎症による咳
  • 呼吸器系持病(気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫など)の悪化による呼吸機能低下

標高が高いことによる症例

例えば、南米ではボリビアのラパス(約3,640m)、エクアドルのキト(約2,850m)、メキシコの首都メキシコシティ(約2,240m)、アフリカではエチオピアのアジスアベバ(約2,355m)など、日本の高山(例:富士山の5~8合目付近)に匹敵する標高で生活する地域があります。

このような高地環境では、以下のような疾患が生じることがあります。

  • 高山病:頭痛、吐き気、めまい、倦怠感、食欲不振
  • 低酸素症:息切れ、動悸、睡眠障害、集中力低下

予防する方法

暑さや乾燥が激しい地域では、サングラスや日焼け止めを使用することと、こまめな水分・塩分補給が欠かせません。ただし、水道水や未加熱の果物などには注意が必要です。

大気汚染に対する予防として、呼吸器疾患や循環器疾患の持病をお持ちの方は、症状の悪化を防ぐために平時から外出前に大気質の確認をし、屋外活動を避け、窓を閉めて外気の流入をできるだけ防ぎ、室内では空気清浄機を使用しましょう。車で移動する際は、エアコンを内気循環モードに設定することを推奨します。

標高が高い地域では、標高に慣れる時間的余裕を持ち、ゆっくりと呼吸するようにするのも効果的です。また、飲酒・喫煙・睡眠不足を避け、糖質や水分を摂るようにしましょう。

高山病が疑われ、息苦しさやめまいが強くなったり、歩行も困難になったりする場合は、無理せず少しでも標高が低い地域への移動を検討しましょう。短期出張で高地の環境に慣れる時間が無い場合は、トラベルクリニックを受診して、高山病予防薬(アセタゾラミド)内服について相談することも選択肢です。

➁持病の悪化・新たな疾患の発症

海外勤務は、日本と現地間の調整業務や、言語・文化の違い、業務分担がしにくい環境などにより、日本以上に多忙を極めることも少なくありません。さらに、不慣れな地での受診機関探しの煩雑さや、診療に対する不信感などから、受診自体に抵抗感を感じる方も多くいます。当社が対応した中にも、受診を避けるあまり、海外で持病が以下のように悪化した例が見られています。

  • 持病:高血圧⇒心機能の低下、脳出血の発症
  • 持病:不整脈⇒意識が消失し頭部に外傷を負う、脳梗塞の発症
  • 持病:糖尿病⇒糖尿病性昏睡、感染症で重篤な状態となる
  • 持病:健康診断で尿蛋白が続いていた⇒現地で腎機能低下が明らかとなり、人工透析実施が必要になった

勤務地によっては、気温や気候、大気汚染、地域特有の感染症があり、それらが持病を悪化させたり、新たな疾患の発症にもつながります。たとえば、食生活の変化やストレス、運動不足による肥満や、糖尿病、糖質異常症などの生活習慣病にも注意が必要です。

➂メンタルヘルスの不調

2020~2025年の間に、当社にメンタル不調で連絡があった海外勤務経験者を対象に「過去のメンタル不調の有無」を伺ったアンケート調査では、4人に1人が「過去にも不調を感じたことがある」と回答。当社の遠隔心理カウンセリングの実施件数も、新型コロナウイルス(COVID-19)が流行した2021~2022年に急増して以降、一時的に減少しましたが、以降あらためて増加に転じています。

これは、海外勤務者にとってメンタル不調は引き続き見逃せないリスクであることと、遠隔心理カウンセリングのニーズが高いこと、そして遠隔心理カウンセリング自体が新型コロナウイルス(COVID-19)をきっかけに浸透したことが理由として考えられます。

自覚症状として回答されたのは、多い順に睡眠障害、身体症状(頭痛、腹痛、下痢、吐き気、動悸、息切れ、めまい、全身倦怠感)、落ち込み、イライラ・怒りで、他にも、精神的疲弊や意欲・集中力の低下、不安感などが挙げられました。また原因として、過労、勤務地での人間関係、言語や文化の壁、配偶者との関係、孤独、労働環境の違いが多く挙げられました。

メンタル不調は従業員に限ったものではなく、実際インターナショナルSOSが2000~2025年にかけて受けたメンタルヘルスの相談者の約4分の1は帯同家族でした。海外赴任者・駐在員と暮らす帯同家族の体調不良は、家族全員に影響するものと捉え、企業・団体として適切な対応体制を整えることをおすすめします。

海外出張者・赴任者・駐在員・帯同家族に対する当社のメンタルヘルスケアサービスの詳細はこちらからご覧いただけます

おすすめ記事:「海外出張者・海外赴任者・駐在員のメンタルヘルスケア|企業が取るべき対策とは?

➃感染症リスク

日本では発症リスクが低い、あるいは馴染みの薄い感染症も、海外では日常的に流行していることがあるため注意が必要です。

日本では馴染みの薄い感染症例

日本にもあるが、海外で感染リスクが増加する症例

  • 飲食物から:A型肝炎、感染性下痢症
  • 性行為・血液から:梅毒、淋病、クラミジア、HIV、B型肝炎、C型肝炎

予防する方法

基本的なことではありますが、虫よけ対策をする、衛生的に調理・管理された飲食物のみを摂取し屋台などで飲食しない、手洗いを習慣化する、不特定多数が集まる場所を極力避ける、体調が悪そうな方に不用意に近づかない、野生動物との接触を避ける、不特定多数との性交渉を避ける、コンドームを着用する、開発途上国では可能な限り輸血を避ける、などが予防の方法として挙げられます。

また、渡航に先立って推奨されるワクチンは事前に接種してから渡航しましょう。この際、間隔を数週間~数カ月あけて数回に分けて接種する必要のあるワクチンもあるため、余裕を持って事前に必要なワクチンを調べておくことが大切です。

海外渡航前に必要なワクチン・予防接種

ワクチン接種の様子

海外の感染症リスクに対抗するために、渡航前に予防ワクチンを接種することは非常に重要です。接種計画は「すべての人に共通して必要なもの」と「地域に応じて選ぶもの」に分けて考えます。

健康管理の一環として接種が推奨されるワクチンの例

特に以下のワクチンについては、子供の頃に2回接種を完了した記録が無い場合には、抗体検査をして有効な免疫があるか確認するか、この機会に接種を完了することが推奨されます。

  • 麻疹(はしか)
  • 風疹

ポリオワクチンについては、1975年~1977年に生まれた方の場合、小児期のポリオ接種を受けていても免疫獲得が低いと知られているため、追加接種の意義が高いと言えます。

以下のワクチンについては、小児期に正しく接種していたとしても、成人になるとその効果が減弱することが知られているため、追加接種を検討しましょう。

  • 破傷風
  • ジフテリア
  • 百日咳

また、インフルエンザワクチンは年に1回接種しましょう。

参考になるサイト:
一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会 感染症委員会 ワクチンチーム
こどもとおとなのワクチンサイト

国を問わず広く推奨されるワクチン

海外での一般的なリスク(飲食物・医療行為・血液曝露など)に対応するため、赴任前接種が推奨されます。

  • A型肝炎ワクチン
  • B型肝炎ワクチン

各国・地域のリスクに応じて接種を検討するワクチン

渡航先での流行状況や都市部か地方かなどに応じ、以下のワクチン接種も検討しましょう。

  • 狂犬病
  • 腸チフス
  • 髄膜炎菌性髄膜炎
  • 黄熱
  • ダニ媒介感染症

海外の医療事情に対し企業・団体ができる予防・対策

健康診断を受けている海外駐在員

海外赴任者が安全に医療を受けられるようにするためには、企業・団体として事前に体制を整えておくことが重要です。組織に求められる健康管理対策を4つ紹介します。

➀最新の医療事情の確認

赴任先によって医療制度や医療レベルは大きく異なるため、企業側が事前に現地の正確な情報を把握しておくことが重要です。外務省の「海外安全ホームページ」や「世界の医療事情」、厚生労働省検疫所の「FORTH」などを活用し、現地で流行している感染症や推奨される予防接種、生活上の注意点を確認しておくことを推奨します。

併せて、以下の情報も整理し体制を整えておく必要があります。

  • 現地の医療制度や受診フロー、支払い方法の確認・周知
  • 受診可能な医療機関(日本語対応可否、信頼できる病院の情報など)の選定

ただし、公的情報の収集だけでは、変化の早い海外の医療・安全情報に継続的に備えられない場合があるため、専門家によるリスク分析・情報提供サービスを活用するのがおすすめです。

➁事前教育・研修の実施

海外赴任における健康障害を防ぐためには、従業員自身が健康リスクと対処法を理解することも大切です。研修などを通じて、現地の医療事情、かかりやすい疾病、生活上の注意点、受診時の流れや症状・服薬情報の伝え方を共有しておくと良いでしょう。

また、有事の際に適切な行動を取れるよう、対応マニュアル(緊急時の連絡先、医療機関の受診方法、避難先・安全確保の手順など)を整えておく必要があります。こうした知識を体系的に身につけるために、専門機関による渡航前研修を活用し、従業員のリスク認識とセルフケア意識を高めることが有効です。

➂アシスタンス体制の構築

海外赴任者の健康リスクに迅速に対応できるよう、アシスタンス体制を整備しておくことが重要です。以下のような体制を整えておくと、緊急時にも適切な医療支援を受けやすくなります。

  • 24時間対応の医療相談窓口を設け、日本時間の夜間や休日を含めていつでも対応できるようにしておく
  • 現地医療機関の紹介や受診予約の手配を受けられるようにし、適切な医療機関へスムーズにアクセスできるようにしておく
  • 重症時や高度な治療が必要な場合に備え、他地域や本国への医療搬送などを含めた支援体制を確保しておく
  • 医療通訳サービスを利用できるようにし、症状や治療内容を正確に伝えられる環境を用意する

こうした体制を自社だけで整えるのが難しい場合は、外部のアシスタンスサービスを活用する方法もあります。海外の医療事情や安全リスクに精通した専門チームによる支援を受けられるため、緊急時の判断や対応を迅速に進めることができます。

➃健康状態の把握

海外赴任者の健康リスクを適切に管理するためには、健康状態やメンタルヘルスの変化を継続的に把握できる体制を整えておくことが大切です。6カ月以上の海外赴任では、派遣前と帰国後に健康診断を行うことが事業者に義務づけられていますが、赴任中も定期的に健康状態を確認し、一時帰国時や現地での受診につなげられるようにしておくと良いでしょう。

健康診断で異常が見られた場合には、経過観察や受診勧奨、生活指導などのフォロー体制を整えておくことも重要です。また、メンタルヘルスは赴任中の孤立感や生活環境の変化などから不調が表れやすいため、健康診断だけではなく相談窓口などカウンセリングにつなげられる仕組みを用意しておくと安心です。

海外出張者・赴任者・駐在員本人ができる予防・対策

  • ご自身や家族の健康状態を把握する:持病の状態や、主治医・産業医からの評価に問題が無いかどうかを確認しましょう。
  • 処方箋を多めに持参する:海外での薬の再処方は煩雑で、容量が異なることや、同成分の薬剤が無いこともあります。また出張や駐在は予期せぬ理由での帰国延期も頻発します。滞在日数以上の処方箋を、ロストバゲージの影響を受けない持ち込み手荷物に入れて持っていきましょう。英語併記の処方箋を持っていくことがおすすめです。
  • かかりつけ医による英文診断書を持参する:薬が個人治療目的であること、概ね渡航期間に見合った処方量であることと、病名/処方薬詳細/既往歴/現病歴詳細/主治医名と連絡先が明記されたものを発行してもらい、持っていきましょう。

海外赴任者・駐在員に実際に起きた医療リスクの事例

航空医療搬送機と救急隊員

この章では、実際に海外赴任者と駐在員が直面した医療トラブルの事例と、当社が行ったサポートをご紹介します。健康管理体制の必要性や、事前対策の重要性が理解しやすくなります。

事例1|開発途上国で怠薬により脳梗塞を発症し近隣国へ医療搬送

70代の日本人男性の海外駐在員ご本人から、めまい、嘔吐、下半身の脱力感、呂律(ろれつ)障害が起きた翌日に、インターナショナルSOSに入電がありました。高血圧、抗不整脈の薬を内服されていましたが、現地で抗不整脈の薬が切れたため、自己判断で服薬を中断していました。

対応

対応したインターナショナルSOSの医師は、症状から脳梗塞の疑いがあるとし、緊急で医療機関を手配。入院1日目(発症3日目)にMRI検査を行った結果、直近で発症した脳梗塞が確認されました。駐在先が医療高リスク国で十分な原因精査が行えないため、検査直後には集中治療チームの付き添いのもと近隣の医療先進地へ専用機による緊急医療搬送を実施しました。

結果

搬送先の医療機関では、神経科医(専門医)による入院管理のもと、精査と薬物治療の継続、そして循環器科医による心臓検査を経て、治療方針が決定されました。

同機関で理学療法士によるリハビリテーションも開始されましたが、インターナショナルSOSの医師が施設訪問したところ、リハビリに時間がかかることが予想されたため、本人の希望もあり日本への帰国を手配・実施しました。

事例2|初めての海外研修での心身不調に対しメンタルヘルスケアを提供

ある日本人の海外赴任者は、開発途上国へ初めての海外研修のために向かいました。渡航先国の政情不安や脆弱なインフラ、職住接近の環境などにより、目の症状などの身体症状に加えて上気道感染症も発症し、ご本人からインターナショナルSOSに入電がありました。

対応と結果

インターナショナルSOSの医療チームは、身体症状についてご本人に医療アドバイスを行い、現地での受診を手配しました。同時に、ご本人から詳しいお話をお伺いするうちに、新しい環境への適応が困難でメンタル不調も感じていることが分かりました。このため、メンタル不調に対しては遠隔心理カウンセリングの手配も行いました。

当初ご本人は、ご自身のメンタル不調を勤務先に知られたくないご希望でしたが、遠隔心理カウンセリングが進むうちに変化が見られ、インターナショナルSOSから報告した上で、早期帰国についてご本人が勤務先に相談されることになりました。こうして当社は赴任者の状況報告と見解を勤務先に伝え、その結果さらなる悪化を防ぐための早期帰国を手配・実施することになりました。

海外の医療事情に関するよくある質問(Q&A)

看護師と入院中の患者

最後に、海外の医療事情に対してよく受ける質問にお答えします。

Q. 海外で病気になったら日本の健康保険は使えますか?

いいえ。日本の健康保険は海外でそのまま利用できません。海外旅行保険やクレジットカード付帯保険に加入している場合は、その契約に応じて医療費の補償を受けられます。国によっては、その国の健康保険に加入することが義務である場合もあるため事前確認が必要です。

Q. 海外赴任前に必ず受けるべきワクチンはありますか?

まず小児期の定期予防接種歴(麻疹・風疹・ポリオ・破傷風など)を確認したうえで、A型肝炎・B型肝炎の接種を広く推奨します。また、開発途上国など野犬が多い地域に行く際は、狂犬病や地域で流行している感染症のワクチン接種もしましょう。

Q. 海外で処方薬がなくなった場合はどうすればよいですか?

滞在国で追加の処方箋を依頼する場合は、渡航前に準備した英文診断書をもとに、現地の専門医に処方を依頼します。海外には同じ成分・容量の薬が手に入らないこともあるため、日本への一時帰国時に再度処方を依頼することが確実です。また、渡航前に滞在日数分より多めに処方してもらいましょう。

Q. 海外旅行保険と企業の医療アシスタンスサービスの違いは何ですか?

最も大きな違いは、海外旅行保険は、けがや病気をした際の金銭的なサポートをメインとしている点です。また、海外旅行保険の場合、渡航前から罹患していた疾患については、補償の対象にならないことがあり注意が必要です。医療アシスタンスサービスは、実際の医療上の相談から、医療機関の紹介、受診時・治療時のサポート、さらには緊急医療搬送のための移動手段と付き添いの医療スタッフの手配など、医療に関わる幅広いニーズに対応しています。

Q. 帯同家族も健康管理の対象に含めるべきですか?

法律に定められているわけではありませんが、帯同家族の体調不良は、従業員本人の体調や仕事のパフォーマンスにも直結します。従業員が健康的に安心して働く環境をつくる企業の「安全配慮義務」の観点からも、帯同家族の健康管理を企業・団体としてサポートすることを強く推奨します

海外の医療事情を認識し事前に備えることが重要

海外の医療事情は、国や地域により異なりますが、事前準備の有無によっても健康リスクに大きな違いが出ます。まずは渡航先の医療レベルや健康リスクを知ることと、自身や帯同家族の健康状態を知ることが重要です。

特に帯同家族の健康状態は、従業員本人の健康にも大きく影響するため、組織として従業員同様の医療サポートを提供することが非常に大切です。健康リスクは従業員と帯同家族の生命に直接的に関係するため、専門家のサポートを検討するのも賢明な判断と言えます。

インターナショナルSOSは、40年以上にわたり世界90カ国以上1,200拠点以上で、セキュリティ・医療アシスタンスを提供しています。医療アシスタンスでは、例えば以下のようなサービスを提供しています。

  • 24時間365日対応の医師・看護師への相談窓口(110以上の言語対応)
  • 自社運営のクリニックや、信頼性・医療の質を直接訪問して確認した認証済み医療機関への紹介
  • 緊急医療搬送および同伴する医療従事者の手配
  • メンタルヘルスケアサービス

海外出張者・赴任者・駐在員や帯同家族に対する医療サポートに関するご相談は、こちらからお問い合わせください